――日本だと多重下請けで、下流にいけばいくほど待遇面も下がる構造になっていますが、米国の場合はどうなのでしょうか。
川口: 米国の場合、国際語である英語が公用語ですから、例えばコストの低い開発は、東欧やインドに外注する風潮が昔からあります。国内の産業構造ではなく、国によってコストの差を賄っている部分はあるかもしれません。日本の場合は言語の特殊性もあって、そう簡単に他に出せないような状況もあると思います。
小野: 日本も一時期、海外に委託するオフショアの動きもありましたが、日本語だと頼める先がかなり限られているように思います。
川口: 日本のSIerと話していると、海外に投げていたとしても、その向こう側でどのように開発しているか、あまりコントロールできていない人も多いと聞きます。米国の場合、例えば東欧に開発チームがあったとしても、その働き方は米国本社の人たちと変わりません。
小野: 本社側がきちんと技術的なディレクションができているかどうかの違いだと思います。ただ、それは本社側に技術者がいるからこそでしょうね。丸投げのモデルだと、事業会社側の技術者が技術担当の役員をやっていても、その技術に関しては素人の場合も珍しくありません。
――日米のITに関する考え方の違いから、DXへの向き合い方の違いはあるのでしょうか。
小野: 米国だと、あまりDXとは言わないと聞きますが、いかがでしょうか。
川口: 米国でも空港への移動手段が、乗り合いバンが主流だったものがUberに取って代わられるなど、DXと呼ばないだけで変革は起きています。テック系企業がメインストリームビジネスに参入してくる状況に、いろいろな会社が危機感を覚えています。その構造は日本でも米国でも、同じだと思います。ただUberのように、国内の規制で守っている面もあると思います。
小野: 日本でも金融のように比較的規制が厳しい領域にもWeb系の企業が進出したことでさまざまな変化が起きています。クレディセゾンも今インドに進出して事業が急速に成長しているのですが、インドはある意味で日本より規制が厳しく、しかしその中でもテクノロジーやデータを利活用して規制の範囲の中で、事業成長させていくやり方はあるな、とあらためて感じています。
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