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博報堂流「生活者の心を動かす」CX開発〜菓子メーカーを例に徹底解説〜オン・オフラインの融合(3/3 ページ)

» 2025年02月14日 07時00分 公開
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【事例紹介】20代のライフスタイルに寄り添う菓子メーカーのCXを開発してみよう

 ここで、今まで説明させていただいたCX開発プログラムを具体的にご理解いただくために、架空の菓子メーカーを例に、ワークショップの流れを追体験していただこうと思います。

事例:20代のライフスタイルに寄り添う菓子メーカーのCX開発

オリエン

 まず課題として考えられるのが、菓子市場の競争の激化およびコモディティ化への対応です。また、健康志向や予防志向などを考慮し、新たな生活者ニーズを見つけることも必要です。

 そんな環境下でブランドを選び続けてもらうためには、どんな体験を提供すればいいのでしょうか。SNSやオンラインショップ、コミュニティーサイトといったデジタルとプロダクト群や店頭といったリアル、双方のアセットを想定します。

生活者シーン発想

 心を動かすCX開発のステップ1として、既存の顧客接点を洗い出した上で、その接点を生活シーンで拡張していきます。

 具体的には、以下4つの視点で俯瞰しながら、従来のブランド接点を広げていって、CX全体のコアとなるような、改革すべき顧客接点を発見していきます。

  • ターゲットの視点(ターゲットの日常や興味関心ごと)
  • 前倒しの視点(従来の接点の前まで考えてみる)
  • 後ろ倒しの視点(もっと先の接点まで考えてみる)
  • 社会の視点(社会トレンドや5年後10年後の世の中)

 今回の菓子メーカーの例で考えると、 次のような視点が抽出できます。

  • ゲーム、ドライブ、アウトドア、映画、リモートワークのようなライフスタイルの変化・お腹が空くタイミング、仕事のストレスや疲労、ランチタイム、子どもの頃の思い出
  • コーヒータイム、歯磨き、お菓子を捨てるタイミング
  • 食育、孤食、防災

 次に、こうして広がった生活者シーンから、新たな体験の接点を発見していきます。その際に重要となるのが、「接点を選ぶ」のではなく「接点をつくる」というアプローチです。

 つまり、これまでブランドが関わってこなかった生活シーンに入り込むことで、生活者にとっての驚き(WOW)やブランドに対するリスペクトが生まれるような体験の入り口を作ることを目指します。

 生活者シーン選定の際には、次の4つの視点で絞り込んでいきます。

  • これまでより広がっているかという視点(広さ)
  • つながる接点として機能するかという視点(長さ)
  • ブランドが寄り添うことに納得感があるかという視点(意義)
  • そして、競合に差をつけることができるかという視点(優位性)

 上記のようなプロセスを踏んだ上で、今回は「リモートワーク」という生活者シーンで、その後の開発を進めることにします。

生活者インサイト発想

 次は「20代のリモートワークという新たな生活者シーンにどう菓子は寄り添うことができるのか?」という課題を解決していくわけですが、オンライン・オフラインをあえて横断して既存の顧客体験を見直すことで、生活者のペインポイントや願望を顕在化していきます。

 例えば、仕事をしながらスマホを見てしまうという行動、仕事環境のマンネリ化、気分転換の難しさ、モチベーションをキープすることの難しさといった、リモートワークでの細かな行動やニーズを洗い出しながら、悩みやインサイトを発見していきます。

 今回は、1人で仕事をしていてもモチベーションを保つことができるということを体験価値として設定してみましょう。体験価値を決めたら、次はその体験価値をお菓子のブランドがどんな形で提供していくのかという、コア体験のアイデアを考えるステップに進みます。

 例えば、1人でもモチベーションを保てるタイマーサービスのようなものを、菓子が作ったらどうだろうというアイデアがこれに該当します。いわば、1人の仕事の時間を楽しく管理できるという体験を提供するという発想です。

 なお今回の開発プログラムの中には、私たちが独自にまとめた体験価値のツボがあるので、実際は、それらを参照しながら具体的なコア体験を開発していきます。

生活者エコシステム発想

 3つ目は、新たな体験装置から得られる生活者データを見立て、あらゆる企業アセットとのシナジーや長期的な体験提供の仕組みをデザインするフェーズです。

 私たちは、「新しい体験からは、新しいデータが生まれる」という視座を持って、開発プログラムを考えていますが、今回の例で言うと、リモートワークのルーティンを支援するお菓子のタイマーが利用されることで、いままで分からなかったような生活者の姿が理解できると考えています。

 具体的には、感情、行動、興味関心、習慣など新しいデータを見立てて名前をつけます。例えば、今回得られるデータからは、20代の仕事のリズムが分かると想定して、「仕事リズムデータ」とネーミングしてみました。

 そのデータとSNSやオンラインショップ、コミュニティーサイトなどのブランドアセットを掛け合わせることで、リモートワーク時代のお菓子開発、ランキング機能、あるいは予備校や資格ビジネスとのコラボレーションなど、「+α体験」を生み出すことができます。

「CX heart Map」にまとめる

 最後は、いままでの議論を一枚のシートにまとめるステップです。Mapの上側が生活者視点、下側がブランド資産、左側がオンライン、右側がオフラインという指標で、共有されたアイデアをプロットしていきます。

 以上、私たちが開発したCX改革のための体験開発プログラムの概要を紹介させていただきました。

(1)生活者シーン発想によって体験の入り口を作り、

(2)オンオフ横断のインサイト発想で新たな体験価値を生み、

(3)生活者データと既存アセットの掛け算で顧客体験のコアへと育てる

 ぜひ、ご一緒に“心動かす生活者体験”を生み出していけたらと思います。

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