BBCの事例は、多くの組織が抱える構造的な問題を照らし出している。
では、何をすべきなのか。以下4つの観点から具体的なアクションプランを提示したい。
1. 社内コミュニケーションの刷新
「お客さまとの会食には若手女性社員が同席した方が雰囲気が良くなる」
こうした「暗黙の了解」が、いまだに多くの企業に存在する。これを放置することは、今や重大な人権リスクになり得る。具体的には以下のような指針を検討する。
2. モニタリングの強化
もうひとつ見直すべきは、タレントやインフルエンサーの起用基準。従来の「知名度」「好感度」という指標に加えて、以下の要素を加える必要がある。
「この人物に何か問題が起きた時、会社としてどこまで説明責任を果たせるか」
「その人物の過去の言動や、周囲との関係性まで、把握できているか」
「問題が起きた時の対応プランは用意できているか」
これらの問いに答えられない起用は、すでにリスクが高いと考える。従来の「炎上リスク」の範囲を大きく広げ、取引先や起用タレントの問題まで視野に入れる。また、SNSの反応だけでなく、海外メディアの動向や、社会の価値観の変化までウォッチする必要がある。
3. スポンサーとしての新しい責任
放送局やメディア企業とのリレーションも見直す。
単なる「広告枠の購入者」ではなく、「社会的影響力を行使する共同責任者」としての自覚が求められる。そのために必要なのは、定期的なコンプライアンス体制の相互確認や、問題発生時の連絡体制の構築、視聴者からの意見への対応方針の共有となる。
4.役員会での定期的な議論
「影響力の及ぶ範囲」で起きている問題の洗い出しと対策の検討を行う。
「うちの会社が大切にする価値観」を、具体的な言葉で社内外への明確なメッセージとして発信し続けることが重要になる。
「失敗上手」な組織とは、失敗を恐れない組織ではない。むしろ、失敗を真摯に受け止め、そこから学び、成長できる組織のことだ。問題が発生した際の初動の「スピード」と「透明性」は確かに重要だ。しかし、それ以上に重要なのは、日常的な「気付き」と「対話」の感度を高め続けることだ。
予兆を見逃さない感度を磨き、本音で対話できる関係性を築き、失敗から謙虚に学ぶ。これらは一朝一夕には実現できない。しかし、毎日の小さな積み重ねが、やがて組織の文化を変えていく。
経営層には、定期的な現場との対話や危機管理体制の見直しが求められる。現場では、気付きの共有や相互フィードバックを日常的に行う必要がある。そして組織全体として、これらの取り組みを支える仕組みづくりが不可欠だ。
失敗を恐れることは、より大きな失敗を招く。重要なのは、失敗にどう向き合い、そこから何を学ぶかだ。その意味で、フジテレビ問題は、全ての組織に貴重な学びの機会を提供しているのかもしれない。
(本稿の内容は2025年2月13日時点の情報に基づいています)
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