2023年7月、古田さんが独立後の拠点に選んだのは、もちろんバンコクだ。そこでは“推し活”はもちろん、国内外を転々としながらリモートワークをするデジタルノマドを目指すワークショップ「ノマドニア」に参加した。1カ月の間に、Webライターや動画編集などの10種類の職種を体験し、フリーランスとしての基礎を学ぶとともに、自分が好きになれそうな職種を探した。
10種類の職種を経験したことで、自分が今後どんな仕事ができそうか、何の仕事なら続けられそうかを見極めるきっかけになったのは大きな収穫だった。
しかし、それ以上に古田さんが驚いたのは、仕事を見つけるうえで大事なのは、特別なスキルではなかったことだ。
「会社員として働いていたこと。それ自体が十分なスキルだと思いました。フリーランスにとって最も大事なのは信頼。例えば、きちんと連絡が取れる、丁寧なやり取りができる。そんな、会社員時代に当たり前にやっていたことが、フリーランスとしても生かせるし、それが一番求められているのだと気付きました」
営業事務として働いていた頃、営業担当者が外出先でも短時間で返信できるよう、要点を3行にまとめ、「はい」か「いいえ」で答えられる文面を作成していた。そうした会社員時代に培った簡潔なコミュニケーションが、クライアントとのやり取りでも大いに役立っている。
また、仕事を得る上で、人とのつながりが何より重要であることにも気付いた。
古田さんが初めて仕事を獲得したのは、クラウドソーシングサイトに掲載されていたWebライターの案件だった。「コミュニティーでできた仲間にWebライターの仕事をしたいと打ち明けたところ、『じゃあ今仕事を取ろう!』と提案され、すぐに計画を立ててくれたんです。月に○円稼ぎたいなら、○円の仕事を○件契約する。そのためには、毎日○件ずつ応募するーーという具体的なロードマップを作ってもらいました。そのおかげで、すぐに2件の仕事を獲得できました」
こうした人とのつながりや、円滑なコミュニケーション能力も、会社員時代に培ったものだった。
独立して仕事を探し始める前は不安でいっぱいだったが、その心配は杞憂(きゆう)に終わった。フリーランスとしてのキャリアを順調にスタートさせ、会社員時代の経験を生かしながら、少しずつ新しい働き方を築いていった。
時給5000円、日本で外貨を稼ぐ 円安を逆手に取る“越境リモートワーク”のリアルCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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