なぜパタゴニアは、古着を「新品よりもずっといい」とアピールするのか 背景にある哲学に迫る(2/4 ページ)

» 2025年02月25日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

まだまだ成長を続けそうなリセール市場

 米国でリセール衣料品のECサイトを運営するスレッドアップが公表した調査結果によると、米国の中古衣料品(リサイクルショップ、寄付を含む)の2023年における市場規模は約440億ドル。1ドル150円換算で約6兆6000億円と見込まれています。5年前から2倍以上に成長しており、2027年には700億ドル(約10兆5000億円)にまで拡大すると推定しています。

 日本国内の市場は矢野経済研究所が調査しており、2016年には2500億円ほどの市場規模でしたが、2022年に1兆円を超え、2026年には1兆4900億円に成長していくと予測されています。消費者の環境意識の高まりやなども影響し、今後もリセール市場は拡大していくでしょう。

出所:矢野経済研究所

年間で6割以上の衣類が廃棄されている

 現状、国内の衣類新規供給量は年間79.8万トン。そのうち、約9割に相当する73.1万トンが使用後に手放されると推計され、廃棄される量は47.0万トンに及びます(流通せずに廃棄されるものを含めると48.5万トン)。

出所:矢野経済研究所「環境省 令和4年度循環型ファッションの推進方策に関する調査業務」

 毎年、新規供給量の6割以上が廃棄されていることは驚きです。つまり、このような衣類は「もともと作る必要がない」のです。こうしたサイクルを今後も繰り返すのは意味がないどころか、原料や水道光熱費に人件費、物流費や販売管理費など「ムダの塊」です。生産時に排出する二酸化炭素も相当な量でしょう。

 ムダを徹底的になくそうと業界を挙げて動き出しているのが、アパレル業界の現状です。その先頭を走っているのが、アウトドア企業のパタゴニアです。中でも筆者が注目しているのは「Worn Wear」というプロジェクトです。

 「Worn」とは、日本語で「すり減った」「よれよれの」「着用された」という意味の単語で、古着を指します。パタゴニアではほぼ全ての商品に修理対応ができる体制を持っており、プロジェクトでは「リサイクル」と「リペア」の2つに取り組みながら、衣類を長く使い続け、消費や地球への負担を減らすことを目指しています。

「Worn Wear」の取り組み内容(パタゴニア公式Webサイトなどを基に筆者作成)
取り組みに関するPOP(筆者撮影)

 Worn Wearでは、新品よりもリセール品を買ってほしいというメッセージを発信し「新品よりもずっといい」いうキャッチコピーまでつけて取り組んでいます。

「新品よりもずっといい」を掲げる(筆者撮影)

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