なぜパタゴニアは、古着を「新品よりもずっといい」とアピールするのか 背景にある哲学に迫る(3/4 ページ)

» 2025年02月25日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

パタゴニアの「本気すぎる」取り組みとは

 パタゴニアも営利企業ですから「新品を買ってもらわないと、商売として成り立たないのでは」と気になるところ。そんな心配はつゆしらず、ここ数年、同社は本気の取り組みを続けています。

 筆者がこの取り組みを知った2021年は「Worn Wear ポップアップストア パタゴニア東京・渋谷」というイベントを1カ月間開催。もともと米国で実施していたリユースやリペアの活動を、日本でも試験的に始めたのがこの頃でした。当時、渋谷店では1階に売り場を設置しています。通常であれば目立つ1階には新品を置きたいところですが、1階で古着の販売を大々的に展開するほど、本気度が高いのだと感じました。

 売り場では「無駄な物は買わないで」とPOPを掲示しており、古着の購入は1人につき2点まで。陳列していた商品は、社員から買い取って補修やクリーニングを施した自社製品です。その他、埋め立て地に受け入れられた布地の量や、これまでに同社が修理した着数、衣類を長く着ることでどのくらいのフットプリント(衣類などを使用・廃棄することで生じる環境負荷)が削減できるかといった掲示もありました。

 その後、2024年9月に大阪駅直結の施設にオープンした店舗では、Worn Wearを常設コーナーとして設置しています。

Worn Wearに関するPOP(筆者撮影)
同上
パタゴニア 大阪・梅田ストアに常設しているコーナーの様子(筆者撮影)

 モノを長く使い続けて全体的な消費を減らし、環境へ貢献する同社の考えには、創業者であるイヴォン・シュイナード氏の哲学が影響しています。同氏は登山家であり、その経験を基にパタゴニアを創業し、取引先も巻き込んだ社会的責任を果たす経営を先導してきた「環境経営」の第一人者として知られています。

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