窮地のフジテレビ、どうすれば良かったのか 分岐点は「初動」にあった(1/4 ページ)

» 2025年02月26日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役。横浜銀行勤務時代、全銀協へ出向した際はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。06年に支店長職をひと区切りに退社、現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーとともに情報通企業アナリストとして活動している。


 2024年12月の週刊誌報道で明るみに出た、元SMAP中居正広さんとフジテレビ女子アナウンサー(女子アナ)との性的トラブル。多額の示談金のやりとりがあったという報道もありながら、年明け後には一転して社員が関与していた疑惑があるフジテレビへの猛批判という、当初は予期しなかった展開になっています。

大揺れのフジテレビ(出所:ゲッティイメージズ)

 これまでの報道で盛んに取り上げられている、フジテレビ批判は次のポイントに整理できます。

(1)第1回記者会見(1月17日)の開催方法

(2)フジテレビ幹部社員が当該トラブルに関与した疑惑に対し断定的に否定したこと

(3)初期動作を含めた社内対応

(4)(外部調査を日弁連基準ではないもので実施すると当初発表した)事後検証調査の在り方

(5)社風を作り上げたとされる相談役の処遇


フジテレビがとってしまった「最悪」の初動とは

 筆者は、コンプライアンス推進機構(OCOD)認定のコンプライアンス・オフィサーの資格を有しており、企業不祥事発生時には常に「コンプライアンスの観点から何に最も注視すべきか」という観点で事象を捉えるようにしています。これは同時に、調査委員会が組成された場合、報告書を読む際の大きなポイントでもあります。

 今回の事件について考えると、上述した批判のうち特に重視すべきものは「(3)初期動作を含めた社内対応」であり、「(4)事後検証調査の在り方」もまた、コンプライアンス管理上では重要であると捉えています。

 「(3)初期動作を含めた社内対応」について、調査のポイントをさらってみます。

 トラブルが起きたのは、2023年6月であったといいます。記者会見で港浩一社長(当時)は「自社の社員であった被害者女性の変化に気付いた社員が声をかけ、話を聞いたところ、当事者2人の間で起きた極めてセンシティブな領域の問題であった」と、トラブル発生直後に事実認識をしていたと話しています。この件は上席にも報告され、大多亮専務(当時、現関西テレビ社長)を経て港社長にも報告されたことが分かっています。

 一方でコンプライアンス推進室への報告はなく、ごく一部の人間だけで共有するにとどまっていました。フジテレビが犯した「最大」の、コンプライアンス軽視の初動といって良いでしょう。

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