窮地のフジテレビ、どうすれば良かったのか 分岐点は「初動」にあった(2/4 ページ)

» 2025年02月26日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

なぜ、コンプライアンス軽視の動きをとったのか

 初動の理由について港前社長は「当時の判断として、事案を公にせず他者に知られずに仕事に復帰したいとの女性の意思を尊重し、心身の回復とプライバシーの保護を最優先に対応してきた。この件は会社としては極めて秘匿性の高い事案として判断していた」と説明しています。しかし、情報の秘匿性を優先してコンプライアンス対応を怠るのは、コンプライアンスに関する基本的な理解すらなされていない、といえます。

 もし、当時事実を知っていた社長あるいは専務に「コンプライアンス推進室への報告は、秘匿性を危うくすることにつながる」という誤った理解があったとするならば、自社のコンプライアンス部門を信用してない証でもあるでしょう。社長らのコンプラ意識がお粗末であったのか、あるいはコンプライス推進室が名ばかりでその体を成していなかったのか、その辺りは第三者委員会が調査すべき重要なポイントです。

 そもそも中居氏は、フジテレビがキャスティングした番組で、被害者の女子アナと共演して知り合ったといいます。この流れを踏まえれば、女子アナからトラブル発生の事実を告げられた同社は、即刻中居氏から事実確認をするべきであったでしょう。

 しかし現実は「調査に着手することは、より多くの人間がこの件を知る状況を生む」(港前社長)との理由から、会社から中居氏への正式な聞き取りはありませんでした。

 「被害者擁護の観点から秘匿性を重視した結果」という旨の釈明は、あまりもコンプライアンス軽視の非常識な判断であり、後付けの言い訳に過ぎないといわれても弁明の余地はないように思います。今後の調査では、対中居氏へのヒアリングに動かなかったことの背景にある決定経緯(誰と誰が話し合い、誰が最終決定に関与したのかなど)を明らかにし、再発防止を図るべきと考えます。

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