そこで不思議なのは、なぜ常日頃から「われわれの情報はSNSのデマと違って裏取りをしっかりしています」と胸を張る一流報道機関が、外国人ヘイトにもつながるような雑な話を、公共の電波でうれしそうに流しているのかである。普通に考えれば、中国人転売ヤーのせいにしておけば「得」となる人々が、このネタをゴリ押ししているとしか思えない。
では、それは誰か。結論から先に言ってしまうと、農林水産省とJA(農協)である。
彼らこそ、2024年秋の米不足や今回の価格高騰を招いた「令和の米騒動」の原因である「減反政策」を、半世紀にわたって推進してきた中心的な存在なのだ。
これは何も筆者だけが主張していることではなく、元農水省の官僚でキヤノングローバル戦略研究所の山下一仁氏などの専門家も指摘している。また、秋田県で減反政策に50年にわたって反対してきた大潟村あきたこまち生産者協会代表の涌井徹氏も「根本の原因は長年コメ生産を抑制してきたことによる生産力低下」(ABS秋田放送 2月20日)だと述べている。
ご存じのように、日本では「農家を守るために米をつくるな」という政策をかれこれ半世紀も続けてきた。米をつくりすぎると余るので価格が安くなり、農家の皆さんが貧しくなる。そこで、国のエリートがしっかりと計算して生産調整をするので、田んぼをどんどん潰していきましょう、という減反政策が推進される。
旧ソ連の「計画経済」をほうふつとさせる珍妙な発想だが、50年前の日本人たちは「さすがエリートの考えることは違う」と賛同して、日本中の田んぼをどんどん潰していった。この時代、減反に反対していた涌井氏は「闇米屋」「秋田の恥さらし」などと叩かれた。この農水省の「水田狩り」をバックアップしたのが、他でもない当時の農協なのだ。
「でも、そんな減反も2018年には廃止になったでしょ」と思うだろうが、それはあくまで建前的な話に過ぎない。2018年以降も、農水省は主食用米の全国生産量の「目安」を示しており、米から転作する農家に補助金まで出して、主食用米の生産量を絞ってきたのだ。
この社会主義的な「計画農業」によって、多くの農家がサラリーマン収入と農地売却益や補助金で細々とコメをつくる「零細兼業農家」になってしまう。一方、この収入の安定化によって成長したのがJAバンクだ。個人の預貯金は順調に増えて、2023年3月末時点で993兆円と3大メガバンク以上の額となっている。
ただ、いくらJAが潤っても兼業農家のコメづくりはラクになるわけがない。むしろ、高齢化で年を重ねるごとに衰退の一途をたどっていく。
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