「スキマ時間をいかに効率的に使うか」というタイパ志向が強まる一方で、「いかに安く多くの価値を得られるか」というコスパも依然として重視されている。
chocoZAPの月額3278円というリーズナブルな価格設定は、一般的な総合型フィットネスクラブと比べてもかなり抑えられている。そのうえ、「ジム+α」のサービスをいくつも受けられるというメリットを訴求しやすい。
月会費だけでトレーニングマシンを使い、必要に応じて美容ケアができる。そして時間があればカラオケで歌ってリフレッシュ――。こうした“一カ所完結型”のサービスは、現代のビジネスパーソンが求める「短い時間で複数のメリットを得たい」という感覚にマッチしている。
カラオケだけを楽しみたい場合は、通常のカラオケボックスに行ってもよいだろう。しかし、深夜料金や週末料金などがあることを考えると、価格面では割高感があるのも事実だ。一方でchocoZAPなら定額で利用できるうえ、完全個室であるため周囲を気にせずに思い切り歌える。こうした利便性は、タイパとコスパを求める層にとって大きな魅力となっているだろう。
日本市場は少子高齢化による人口減少が進み、あらゆる業界が成長鈍化のリスクに直面している。フィットネス市場やカラオケ市場も例外ではなく、飽和気味の状態で価格競争に陥っているところも多い。
こうした環境下で、企業が顧客を奪い合うだけでは持続的な成長は見込みにくい。そこで重要になるのが、企業が特定の顧客にどれだけ多くのサービスを利用してもらい、支出を増やしてもらうかという「顧客シェア」の考え方である。
chocoZAPがセルフ脱毛やエステ、ネイル、さらにはカラオケといった異業態のサービスを取り込む理由は、まさに「顧客シェア」を高めることにある。複数の魅力的な選択肢を用意しておけば、会員が離脱する理由を減らし、トレーニングだけでなく余暇や美容など、あらゆる目的で“つい店舗に足が向いてしまう”状態を作り出すことができる。
しかも、カラオケを目的に来店しても「隙間の10分だけ筋トレでもしようか」「せっかくだからネイルブースを使おうか」といったように、別のメニューに手を伸ばす機会も増える。これは顧客満足度の向上だけでなく、サービス活用頻度の上昇にもつながり、“月額を払う価値”を実感させる大きな要因となるのだ。
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