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韓国IR「インスパイア」が1周年 社長が考えるLTV向上策は?(2/2 ページ)

» 2025年02月28日 08時00分 公開
[武田信晃ITmedia]
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印象的な色使い インスパイアの理念から

 インスパイアでは、施設にいろいろな色を取り入れている。スー社長は「分かりやすいところでは、フォレストタワーは、ファミリーフレンドリーなホテルタワーですが、多彩な色を意図的に取り入れています」と話す。

 その辺りの作り方が、北東アジアのこれまでのIR施設とは異なる印象を受ける。例えばインスパイアにはオーロラ、デジタルシャンデリアの下に位置する魅力的なオープンキッチンスタイルのシェフズキッチン、そしてインスパイア・アリーナなど、米ラスベガスなどの大きなIR市場を彷彿(ほうふつ)とさせる要素が多数ある。 

 インスパイアのリーダーとして、どのような組織を作っていきたいかを聞くと「成功するには異文化の人々の架け橋となることです。卓越した顧客体験を提供するために重要なこと」と答えた。

 「人事や文化部門は、これらの価値観を新入社員に浸透させるために時間と労力を費やしています。私は社員に対して顧客にサービスを提供する専門家としてだけではなく、大きな組織の一員として、また個々のチームメンバーとして、インスパイアの理念を持ち続けるよう鼓舞するリーダーでありたいです」

 インスパイアが直接雇用する従業員のうち、全体の80%は仁川市民であり、韓国の雇用創出に貢献している。韓国政府からは「2024年雇用創出大統領賞」を受賞。「2024年模範企業」にも選ばれた。

 「われわれのプロジェクト投資の根幹にあるのが社会貢献で、『共存共栄』が大きな理念でした。現在インスパイアは、20ほどの高等教育機関と連携し、1000人以上の新卒を雇用しました。これが大きかったと思います。この採用方針により、インスパイアは韓国の一般的な企業よりも若い社員が多く、若手主導の企業文化が醸成されていると感じています」

 アリーナでのコンサートが開かれた場合、インスパイアの客室が満室になると、当然に周辺のホテルに顧客が流れる。他のホテルも満室になり、周辺のスーパーの売り上げも向上するなど、地域経済にも貢献しているという。

リゾート内のコンセプトの異なる3棟からなるホテル(フォレストタワー、サンタワー、オーシャンタワー)は、5つ星ホテルの評価を得た

企業論理を優先せず、客と向き合う

 顧客第一とは、よく叫ばれている。だが実際に実践している企業は、どのくらいあるだろうか。現実的には企業論理が優先され、顧客第一が形骸化しているケースも少なくない。

 スー社長率いるインスパイアは、スプラッシュ・ベイの改修や今回のインタビュー発言にもにじみ出るように、客と向き合うことによってサービスを充実させ、満足度の高いリゾート体験を提供している。その結果として、LTVの向上を図ろうとしているように感じた。

インスパイア・アリーナで開催するK-POPアーティストの公演ラインアップ
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