BTSやSEVENTEEN、LE SSERAFIMなどグローバルアーティストを擁するエンターテインメントライフスタイルプラットフォーム企業HYBE。NVIDIAやMicrosoftなどと共に、米国の経済誌『FAST COMPANY』による「2024年 世界で最も革新的な企業50社(The World's Most Innovative Companies 2024)」にも選ばれた。
HYBEの強みは、2019年にリリースし、累計ダウンロード数が1億を超えるファンのためのオールインワンアプリ「Weverse」を開発・運営しているWEVERSE COMPANYを傘下に置いていることだ。
Weverseは、コンサートのオンライン視聴など、ワンストップでさまざまなことができる「スーパーアプリ」を標ぼうしている。AKB48やBLACKPINKといったHYBE LABELS以外のアーティストも参加するほどの存在感だ。
2022年6月に設立された日本での拠点となるWEVERSE JAPANのムン・ジスGMが単独インタビューに応じた。
「Weverseのように総合的に『推し活』を楽しめるサービスは他にあまりないですね」
海外にはWeverseのようなワンストップアプリがあるのかと聞くと、ムンGMは非常に流ちょうな日本語でこう答えた。学生時代に日本語を学び、ゲーム業界でキャリアを築いてきたと話す彼は、テクノロジーの発展にも明るい。
Weverseは、MAU(月間のアクティブユーザー)約1000万人、累計LIVE再生数は20億強を誇る。245カ国・地域で利用され15の言語にリアルタイムで翻訳可能だ。
主な機能は「コミュニティ」「コマース」「メディア」「ライブストリーム」などに分かれる。コンサートのオンライン視聴、テキストを通したファンとアーティストの交流、ファンクラブメンバー限定のコンテンツ、コンサート会場での物販受取サービスの手配など多彩なサービスをこのアプリ1つで提供する形だ。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2023年11月に発表した「世界デジタル競争力ランキング2023」で韓国は第6位(日本32位)だった。国連が2022年9月に公表した「デジタル政府ランキング2022」でも第3位(同14位)にランクインしていて、韓国は全体的にデジタル技術の使い方に長けている。それは音楽業界においても同様だ。
ムンGMも「グローバルの大手事務所と競争していかないといけませんし、今後のエンタメ業界全体を拡大させていくためには、テクノロジーの力が絶対に必要」だと言い切る。
HYBEの事業は「レーベル」「ソリューション」「プラットフォーム」の3つが柱だ。そのトライアングルのソリューション内に、AIオーディオ技術を持つSupertoneやゲームを始めとしたインタラクティブメディアを提供するHYBE IMを含めたテック企業を抱えている。
「各種IPと、IT技術を融合させて、ファンが気軽に使えるアプリなどをどれだけ実装できるか。今後はコンテンツの勝負になると推測しています。つまり、よりよいプラットフォームを作らなければ、グローバルで事業展開することが難しくなるのです」
その考えを具現化させたのがWeverseということになる。開発には主に2つのきっかけがあったという。
「1つ目は、コンサート商品の販売会場で暑い中、何時間も並んでいるファンの姿でした。『アーティストをこれだけ愛してもらっているのに、こんなに負担をかけていいのか?』ということです。もう1つは、それまでのビジネスがオフラインを中心とした構成になっている点でした。アーティストの立場としては、ファンがどんなアクションをしているのか、自分のファンはそもそも誰なのかという情報が見えづらいのです。つまり、ファンが何を求めているのかもつかみづらいということです」
ファンとアーティストの両方のニーズに応えようとした結果が、プラットフォームの開発につながったのだ。
「データを通じてファンの欲しいものが分かれば(アルバムで自分が作りたい曲を作るのは別として)イベントを企画したり、どんな商品が今のトレンドに合っているのかが理解できたりします。この部分が事業推進における重要なアプローチのひとつだと考えました」
アプリは使いやすくなければ、継続して使ってもらえない。従ってUIのデザインが重要だ。ただ、ファンの意見を全て取り入れると、機能が増えて使いにくくもなる。2024年3月にマクロミルが発表した調査結果を見ると、Weverse利用者の満足度は87%と高い。一方、不満な点を見ると「使い方が分からない」が48.1%、「機能が多すぎて使えていない」が32.7%だった。
相反する2つの要素を両立するには、いかにしてUIを作り込めばいのだろうか。ムンGMは、韓国本社には150人規模の各種エンジニアが在籍していることを話す。
「ユーザーの不便さをなるべく解消したいというところから始まっていますので、ユーザーの意見を聞き、改善するのは当たり前です。ただ、いろいろな機能があれば、ややこしくなるのも避けられません。エンジニアや、企画担当などさまざまな担当者と話し合い、改善箇所について慎重に決めていきたいと思います」
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