最近、仕事に全力投球せず、必要最低限の業務だけをこなす働き方である「静かな退職(Quiet Quitting)」が、若者を中心にじわじわと広がりつつある。
働き手にとっては、ワークライフバランスに重きを置くことができるし、責任のある仕事にチャレンジしなくても良いためストレスも減るなど、メリットが多いのかもしれない。しかし企業にとっては、業務に消極的な社員が増えることは大問題だ。
「働きがいのある会社」に関する調査・分析を行うGreat Place To Work Institute Japan(東京都港区)が実施した調査によると、「静かな退職」を実践する人は“強い意志”を持っていることが明らかになった。
2024年1月と12月の調査を比較したところ、「静かな退職」実践者は微増(2.4%→2.8%)した。年齢別に見ると25〜29歳、35歳以上の年代で増えており、ほぼ全ての年代で増えていることが分かった。現時点での実践者の割合は低いが、今後更に実践者が増えていく可能性が示唆される。
静かな退職を「見た、聞いたことはある」と答えた人は全体で約3割だった。職位ごとの認知度を見たところ、経営・役員、部下を持つ管理職、一般従業員の3つの職位の中で、経営・役員間の認知度が相対的に低いことが分かった。現場の従業員、管理職まで「静かな退職」の認識が進む中で、経営・役員の認識が追い付いていない様子が分かる。
「静かな退職」実践者に対して将来に不安を感じることがあるか聞いたところ、「収入が増えないかもしれない」(41.2%)、「仕事のスキルが上がらないかもしれない」(33.0%)が上位に並んだ。一方で、「職場で孤立してしまうかもしれない」は5.4%にとどまり、「静かな退職」実践者は収入やスキル面での不安を抱えているが、職場での孤立は不安としていないことが明らかになった。
上司層(経営・役員、部下あり管理職)に対して静かな退職の職場への影響を聞き、静かな退職を実践する人の回答と比較した。
「静かな退職」実践者の4割以上が職場への影響はないと回答していた一方で、上司層で同じように回答した人は11.9%にとどまった。「静かな退職」実践者より上司層のほうが、職場への影響があると感じているようだ。
上司層は「周囲から期待されなくなる」「仕事量の偏りによる不満が募る」「連帯感が低下する」などを主な影響として挙げた。一方、静かな退職実践者はいずれも影響として見なしている割合が少なかった。特に、「職場への不満」「連帯感の低下」は上司層と静かな退職実践者とで20ポイント以上の差がある。静かな退職実践者は自身の影響を客観的な視点から把握できていない可能性が示唆される。
Great Place To Work Institute Japanの荒川陽子代表は、「今回の調査から静かな退職の実践者は職場内での孤立も厭わず、『自分は自分』という姿勢であることが分かった。少数の静かな退職がきっかけとなり、現在静かな退職をしていない人や今後活躍を期待する中間管理職にも悪影響を及ぼす……。このような負の連鎖を生まないためにも、まずは経営者が静かな退職への感度を高めることが重要だ。離職率では測れない静かな退職の予備軍や実践者を見極める手法を複数持ち、働きやすさとやりがいを両立させた、働きがいのある会社を作るべく、率先して手を打っていただきたいと思う」とコメントした。
調査は2024年12月23〜26日、全国20〜59歳の男女1万3824人を対象に実施した。
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