「静かな退職」どうなくす? 9割「働きがい」感じるタイミーの事例から分かること最低限しか働かない若者が増加(1/3 ページ)

» 2024年03月06日 09時30分 公開
[ほしのあずさITmedia]

 仕事に全力投球せず、必要最低限の業務だけをこなす働き方である「静かな退職(Quiet Quitting)」が、若者を中心にじわじわと広がりつつある。

 言われたことだけをこなし、期待を超える働き方はしない「静かな退職」は、プライベートの時間が確保しやすいというメリットがある。同時に責任感のある役職を任せられる機会も減少するが、静かな退職を選択する人にとってはデメリットにはならないだろう。

 しかし企業としては、こうした静かな退職者を見過ごすわけにはいかない。職場内が業務に消極的な社員ばかりになると、ポジティブな循環が生まれにくくなるからだ。そのため企業は、社員がこれらの働き方を選択する前に食い止めなくてはならない。

 多くの若者は何をきっかけに、どのような心理で、静かな退職を選択したのだろうか。また静かな退職を食い止めるために、企業にできることはあるのか。Great Place To Work Institute Japan(以下、GPTW)代表荒川陽子氏と、2024年度「働きがいのある会社」ベスト100にランクインした、タイミーの執行役員緒方仁暁氏に話を聞いた。

最低限しか働かない若者が増加 なぜ……

 22年にアメリカのキャリアコーチであるブライアン・クリーリー氏が、静かな退職に言及する動画を発表し、注目を集めた。「退職」という語幹から、既に退職している、もしくは退職しようとしている人を表す言葉と捉えられることもあるが、正しくは「働いている状態」「働き方」を指す。

 同様に「ぶら下がり社員」という言葉もある。ぶら下がり社員は日本型の雇用により、グローバルに通用する専門性を自ら獲得する機会を得ることができなかった人たちがやる気を失い、指示された仕事以外しない、モチベーションが下がってしまうことを指す。静かな退職の特徴である「退職、転職するつもりはないが、積極的に仕事に意義を見いださない状態」は、自らそのような働き方を選択している点において、結果的にそうなってしまったという「ぶら下がり社員」とは異なる。

 GPTWによる独自調査によると、静かな退職を実施しているうちの約3割は、20〜34歳の「若手社員」だと分かった。このような働き方をする理由を問うと、約半数が「プライベートの時間を確保できる」、次いで約3割が「仕事のプレッシャーがなくなり、心身の健康を保てる」と回答した。

働き方 「静かな退職」実践者の年齢層と、メリット(提供:GPTW Japan)

 日本においても、静かな退職を実施している人が既に一定数いるという結果となったが、彼らは何をきっかけに静かな退職を選んだのだろうか。

 その理由を尋ねたところ「仕事よりプライベートを優先したいと思うようになったから」が約4割、「努力しても報われない(正当に評価されない・給与に反映されない)から」が約3割と続いた。

 GPTWの荒川さんは、組織内で「努力しても報われない」状態が起きていることに警鐘を鳴らす。静かな退職を選択した要因は、入社後にあると読み取れるからだ。

働き方 「静かな退職」を選択したきっかけは?(提供:GPTW Japan)

 また、静かな退職を選択している人のうち約4割は、この先企業の施策や働き方に変化があったとしても「働き方は変わらない」と回答している。社内に静かな退職を選ぶ人が一定数現れてから行動しても、手遅れになる可能性が高いということだ。

 企業は、抱えている従業員が静かな退職を選択してしまう前に、組織改善に取り組まなければならない。

働き方 今後勤め先で以下の変化が起きた際、あなたの働き方は変わるか(提供:GPTW Japan)

 「プライベートの充実を確保できる働きやすさ」は大切だが、「やりがい」も欠かすことができない。働きやすさとやりがいの両方がそろって、働きがいの感じやすい職場になるのだ。

 静かな退職を選ぶ人は、働きやすいがやりがいはない「ぬるま湯職場」や、働きやすさもやりがいもない「しょんぼり職場」に増加しているという。これらの企業は、いかにして働きやすさとやりがいの両方がそろった、働きがいのある「いきいき職場」へとランクアップできるかが重要になる。

 では、社員一人一人の「やりがい」を高めるために、企業はどのような取り組みを行うべきなのか。やりがいを高める上で重要となるのは「上司・部下の信頼関係」「職場への貢献」の影響が強いといわれている。

 スキマバイトサービス「タイミー」を提供するタイミーでは、「働きがいのある会社」調査で従業員の9割以上が「働きがいがある」と回答した。従業員の働きがい実感を高めるために、タイミーではどのような取り組みをしているのか。

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