月次、四半期、通期の決算早期化を実現するには、人事管理領域以外に営業観点の売り上げや仕入れ管理も迅速に行わなくてはなりません。事前に申請があった内容と突合し、請求書の発行、受領を円滑に進めるためには、発注管理や申請管理、リーガルシステムも必要になるでしょう。
また、経営者は詳細データよりも、会社全体を俯瞰できる全社的な傾向や予測、部門別の課題を常に察知できる状態を望むはずです。そのため、さらにBIツールやAI分析ツールを投入し、アドオンされたSaaSのオンパレード状態となってしまい、収集がつかなくなります。
次に示したのは、バックオフィス業務で多くの企業が目指したい姿の一例です。これを実現するためには、最初から全体像ありきで一本化できるベンダーやソリューションを探すか、いくつかのツールをつなぎ合わせる自社の最も効率的な流れを構築するしかありません。
とはいえゼロベースから構築する企業は少なく、何かしらのツールを既に導入しているでしょう。全体像をイメージしつつ、一つずつのつなぎ方を丁寧に考えていくのがベターです。
人数が多く業務が煩雑な企業の場合は、一つのソリューションを導入するにもかなりの労力を要するはずです。やっと導入の終着点が見えてきたころ、他の業務とのつなぎ合わせが不十分という課題が挙がったり、導入してから現場からクレームの嵐になったりというケースも見受けます。
そうならないためにも、目指す姿を明確にし、部分最適に陥らないようにすることが重要です。今後もDXの潮流は続いていくのが予想される中で、今回はバックオフィス業務のDX課題について解説させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
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社長が連れてきた「すごい人」は役立たず!? DXを失敗に導く7つの要素Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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