しかし、日本経済が長く低迷していることからも分かるように、この「起爆剤」のほとんどは「不発」で終わる。建設や不動産という特定の業界には瞬間的にバブルが起きるが、地域経済が活性化することは難しい。
最初は物珍しくて人が集まってもすぐに閑古鳥が鳴いて、後に残るのは何をやっているのかよく分からない公務員の天下り機関と、国や自治体の莫大な借金しかない。事実、東京2020で建設された競技施設も、毎年すさまじい赤字をタレ流している。
なぜこうなるのかというと、「人口減少」が元凶だ。日本の人口は年間約89万人が自然減している。これは和歌山県の人口に匹敵する規模だ。税金を使ってハコモノを建て、駅前を再開発したところで、この消えた人たちが戻ってくるわけがない。
つまり、日本のあちこちに税金を突っ込んで仕込まれる「起爆剤」というのは、開発・建設業者と役人が潤うだけで、人口減少ニッポンの「縮小する経済」の中では、何の影響もない税金のムダ使いなのだ。
だからこそ、大阪・関西万博としては全国民がドン引きするくらいの「ダダすべり」をしてもらう必要がある。
これまで紹介してきた「とにかくなんでもかんでも“起爆剤”をうたっておけば税金のムダ使いの免罪符になる」という悪しきカルチャーをギュッと凝縮した集大成が、今回の大阪・関西万博だからだ。大阪・関西万博の公式Webサイトには「開催目的」としてこう高らかに宣言されている。
「万博」には、人・モノを呼び寄せる求心力と発信力があります。
この力を2020年東京五輪・パラリンピック後の大阪・関西、そして日本の成長を持続させる起爆剤にします。
「東京2020」が日本の成長の「起爆剤」にならなかったことから分かるように、これはかなり無理がある話だ。それでも万博が「日本の成長のための起爆剤」という看板に固執しなくてはいけないのは、われわれ国民の血税が大量に注ぎ込まれるからだ。2024年2月時点で政府が明かした「万博の国費負担」は1649億円。他にもインフラ整備費や万博アクションプランで、2兆8000億円が見込まれている。
賃金が上がらない、医療や年金など社会保障負担が重すぎるなど国民の暮らしが苦しくなる中で、こんな税金の使い方をすれば、国によっては「暴動」が起きる。しかし、日本人は羊のようにおとなしいので、「日本成長の起爆剤だ!」といわれると、不満をグッと呑み込んで従わざるを得ないのだ。
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