ただ、現実を見ればこれがいかに建前に過ぎない話かはすぐに分かる。ご存じの方も多いだろうが、大阪市民と国民の血税を投入して、多くの人々を迎え入れるインフラ整備をした後、この会場の跡地には「米国のカジノ」ができる。
現在、建設中の「米国館」のスポンサーでもある米カジノ大手・MGMリゾーツ・インターナショナルが出資する「大阪IR」(カジノを含む統合型リゾート)の建設が、4月30日に始まる予定だ。
『読売新聞』によれば、会場跡地開発は用地を4つに分ける。サーキットやウォーターパークのある「エンターテインメント・レクリエーションゾーン」、商業施設のある「ゲートウェーゾーン」、そして最も広大な敷地となるのが「IR」と「IR連携ゾーン」である。
当たり前だが、いきなり何もない大阪の埋立地に、巨大なIRを建設しようというのは、事業者側の負担も大きいし、リスクも大きい。敷地の整備はもちろん、埋立地までの交通インフラの整備はもちろん、この埋立地まで客を呼び込む仕掛けがない。
そこで「万博」という国家プロジェクトの出番だ。国や自治体がかなりの金を出して、会場や交通インフラ整備をしてくれる。しかも、わずか数カ月であっても国際イベントを開催すれば、単なる埋立地が「万博跡地」に格上げされる。海外のIR事業者からすれば、国や自治体からここまで手厚いサポートをされて進出しないわけにはいかない。
こうした生々しい「オトナの事情」は、あまり世の中で知られていない。「万博は日本の成長を持続させる起爆剤だ」という日本人好みのストーリーが盛んに語られているからだ。
そういう意味でも、万博はダダすべりしたほうがいい。巨額の赤字を抱えれば、大阪市民も国民も「そもそも、なんでこんな時代錯誤的なことをゴリ押ししたの?」という話にならざるを得ない。この計画を誰が決めて、どういう「起爆剤」にしようとしたのかという検証がしっかりとなされたとき、そこには必ず「IR」という話が出てくる。
そうなれば、「起爆剤経済論」にとらわれている日本人もようやく目が覚める。「ああ、日本中に起爆剤があふれているけれど、そんな都合のいいサクセスストーリーの裏には、こういう一部の人たちのもうけ話があるんだな」と国民がようやく気付き、税金のムダ使いに厳しい目を向けるようになる。
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