こういう話をすると、必ず「左翼」とか「反日」とか言われてしまうが、戦後の日本人は経済の中で「戦争」を引きずり続けていた。これは当たり前のことで、戦後の日本を作ったのは、戦中の教育を受けた人々だからだ。
戦中世代が管理職世代になった高度経済成長期、社会人になった戦後生まれの世代は軍隊の「新兵いじめ」のような厳しい環境で鍛えられた。そうして生まれた「企業戦士」も「上官の命令には絶対」を叩き込まれて、過労死やパワハラは当たり前になる。
他にも昭和のサラリーマンに見られた「定時出勤」「5分前行動」というカルチャーや「イケイケドンドン」「突貫工事」という言葉のルーツをたどると軍隊に突き当たる。
そのあたりは以前公開した記事『大戸屋が炎上した背景に、ブラック企業と日本軍の深い関係』に詳しく述べたので、興味のある方はお読みいただきたい。
経済の話をしているのに「起爆剤」などという物騒な表現を当たり前のように使っているのは、われわれがいまだに昭和を引きずっているからではないか、と個人的には思っている。
人口が右肩上がりの昭和の時代ならば、巨大なイベントやハコモノを起爆剤に経済を活性化する「作戦」もある程度、効果を上げられたかもしれない。しかし、今はもう令和なのだ。
万博がダダすべりするのを契機に、「起爆剤で景気復活!」みたいなムシのいい幻想はスパッと捨てるべきだ。毎年約90万人が減っていく国でわれわれが考えなくてはいけないのは「何を起爆剤にするか」ではなく「何を諦めるのか」である。
「昔は良かった」と現実逃避したくなる気持ちも分からんでもないが、そろそろこの厳しい現実に向き合って本質的な議論を始めるべきではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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