カスハラの定義を検討するにあたり、音声解析などのAIを活用したクレーム分析も有効です。音声解析とは、人の声を解析し、音声データから有用な情報を抽出する技術です。音声認識、感情分析、話者識別などを活用し、コールセンターの業務改善や、通話内容の分析による応対品質の向上などに役立ちます。クレーム分析の有効な手法として以下のものがあります。
通話の書き起こしテキストから、特定のキーワードの出現を確認する方法です。例えば、顧客・オペレーターの双方に下記のようなキーワードを設定します。
【キーワード設定の例】
顧客:「お前」「ふざけるな」など、威圧的な表現
オペレーター:「すみません」「申し訳ございません」など、謝罪の表現
当社で実施した分析結果では、顧客・オペレーターのどちらか一方のみにキーワードを設定しても、カスハラ判定の精度が低いことが分かりました。オペレーターが「すみません」などの謝罪表現をクッション言葉として発している場合や、単に顧客の言葉遣いが悪いだけの場合はカスハラには当たらないためです。キーワードの出現回数や、両者のキーワードを掛け合わせて分析することでカスハラの判定制度が上がります。
キーワード分析をもとに、オペレーターが通話中にどのタイミングで謝罪のキーワードを発するとカスハラに発展しやすいのかや、問い合わせ種別における謝罪回数の違いなどの分析もカスハラを定義する上で有効です。
通話中の音量や声のトーンの変化を分析し、顧客の感情変化を検出する手法です。例えば、当社の音声感情認識機能では、発話音声の音声特徴と、音声認識器により得られる単語と単語信頼度を入力として、DNN(Deep Neural Network)を用いて発話音声の感情を推定します。
今回の分析では、通話中に3回連続で顧客の感情がネガティブ方向へ変化した場合にカスハラの可能性があると判定し、抽出した通話の分析を行いました。
AIに特定の発話がカスハラに相当するかを判定させる手法です。例えば、キーワード分析でカスハラの可能性があるとして抽出した通話の書き起こしテキストに対して「次の文章は顧客の威圧的な行動を表現しますか? 表現する部分を教えてください」といった指示を出すことで、AIが理由や該当箇所を示してくれるため、人間がカスハラを判断しやすいといった利点があります。
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