クレーム分析で得られた仮説をもとに、AIを活用して下記のような対策を実施することができます。
長時間の拘束や、クレームになりやすい通話時間を設定して、一定の通話時間を超えたらアラートを出し、通知を受けた管理者は、該当の通話のリアルタイム文字起こしから対応内容を把握し、オペレーターのフォローに入ることができます。
その他にも、顧客のトーンの変化や特定のキーワードが発されたときに通知を出すといった機能も開発されています。
設定したキーワードが発された通話にAIが自動でラベルを付けることで、クレームやカスハラの可能性がある通話を抽出できます。また、生成AIが自動議事録を作成することで報告業務の効率化を実現できます。
通話中に発されたキーワードをもとに生成AIがFAQやマニュアルを表示し、オペレーターの対応を支援します。
例えば、オペレーターが契約内容について顧客から問い合わせを受けた際、「契約」というキーワードをもとに、AIが関連するマニュアルやFAQを自動で表示します。
これにより、回答を調べるために通話を保留して時間が長引くことや、不確かな回答によって顧客に誤った情報を伝えてしまうことを防ぎ、オペレーターが原因となるクレームの発生を抑える効果が期待できます。
また、オペレーターにとっても心理的負担の軽減や応対品質の向上にもつながります。
カスハラやクレームに発展するケースとして、顧客起因によるものだけでなく、オペレーターの対応に起因して発生するケースもあるため、応対品質の向上はカスハラを未然に防ぐことにもつながります。
実際にコールセンターでAIを活用している企業の事例を紹介します。
AIが文字起こしデータから「納得できない」「上の人」といったクレームの可能性がある単語を検知した際、管理者に自動で通知を送信します。クレームの判断はその場の雰囲気や受け取り方によって異なるため、担当者だけで判断せず、管理者が確認・対応する仕組みを構築しました。これにより、担当者が1人でクレーム対応を抱え込まない体制を実現しています。
AIによるキーワード検知を活用し、クレームの可能性がある通話を自動で抽出。さらに、通話終了後にオペレーターが「電話対応後の気持ち」を選択する仕組みを導入し、オペレーターの心理状態を把握できるようにしました。
これにより、AIによる自動抽出とオペレーターの心理状況を掛け合わせて、クレーム電話や悪質なクレーマーの早期発見を可能にし、オペレーターのフォロー体制を強化しています。
このように、AIを活用したクレーム分析と対応の仕組みは、企業の業務効率化だけでなく、オペレーターの心理的負担を軽減し、より質の高い顧客対応を実現することにつながります。適切な活用により、クレーム対応の透明性を高め、組織全体の対応品質を向上させることが可能です。
次回は、企業がカスハラ対策としてAIを導入する際の注意点や、AI活用を進めるためのマインドチェンジについて解説します。
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