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コールセンター大革新 AIは「カスハラ」をどう見分けるのか?「音声×AI」が変えるビジネスの未来(1/3 ページ)

» 2025年03月18日 07時00分 公開
[中村有輝士ITmedia]

連載:「音声×AI」が変えるビジネスの未来

ビジネスシーンでAI活用が広がっている。AIに学習させられるデータは、テキストや画像だけではない。実は有効活用できるにもかかわらず、多くの企業が気付いていない宝の山、それが「音声データ」だ。「音声×AI」を軸としたサービスを展開するRevComm(東京都渋谷区)の中村有輝士氏が、音声AIを活用したコールセンターのカスハラ対策について解説する。

 前回の記事「『AIによるクレーム分析』で従業員を守れ カスハラ対策、企業が打つべき手は?」では、社会問題化しているカスタマー・ハラスメント(カスハラ)の現状や、それが企業にもたらすリスクについて解説しました。

 今回は、コールセンターにおけるカスハラ対策として、クレーム分析やAI活用の方法を事例も交えながら解説します。

AIは「カスハラ」をどう分析し見分けるのか? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:中村 有輝士(なかむら・ゆきのり)

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BPOコールセンターに10年間勤務。オペレーター、スーパーバイザー、マネージャー、営業など一通りの業務を経験。

その後、外資の証券会社で、日本にある営業部門とシンガポールにあるカスタマー部門をマネジメント。

2020年7月よりRevCommに参画し、カスタマーサクセスのマネージャーを経て、コールセンター向けプロダクト「MiiTel Call Center」のプロダクトマーケティングマネージャーを担当。福岡県在住。


企業ごとの「カスハラ定義」の難しさ

 企業がカスハラ対策を実施する際には、ガイドラインの策定、従業員研修、相談窓口や専門部署の設置、職場環境の整備など、さまざまな施策が考えられます。その第一歩として、「どのような顧客を対象とし、どのような行為を許容しないのか」といった、自社に適したカスハラの定義を決めることが重要です。

 しかし、カスハラの定義は業種や提供する商品・サービス、顧客対応のシチュエーションによって異なり、一律に策定することが難しいのが課題です。

 当社では約1万5000件の通話データをもとにクレーム分析を行い、その結果から、BtoCとBtoBにおけるカスハラの特徴の違いを以下のように整理しました。

BtoCのカスハラの特徴:リアルタイム検知が鍵

 BtoC業態では、不特定多数の顧客からの問い合わせが発生し、いつカスハラに発展するかを事前に予測するのが難しい傾向にあります。暴言や攻撃的な表現、長時間の拘束などが典型的なカスハラ行為として挙げられます。そのため、管理者がすぐに対応を代わることができるよう、リアルタイムでカスハラを検知する仕組みが求められます。

BtoBのカスハラの特徴:報告の効率化が重要

 カスハラは、小売業や飲食業などBtoC業態で発生しやすいと考えられがちですが、BtoBでも発生する可能性があります。BtoBの場合、取引相手の情報が明確なことが多く、立場を利用した過度な要求が問題となります。そのため、その場での即時対応よりも、カスハラの基準を明確にし、報告の漏れを防ぐ仕組みの整備が重要です。特に、担当者が管理者へ報告する際の業務効率化が求められます。

 また、管理者と現場オペレーターの「受け取り方のギャップ」にも注意が必要です。クレーム対応に慣れているオペレーターほど、カスハラを「許容範囲」として捉え、報告しないケースがあるため、適切な報告基準を設定することが重要です。

 このような自社の特徴を踏まえてクレーム分析を実施し、自社における「カスハラ定義」を決めていく必要があります。

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