井阪氏の退任は、伊藤家のつたない策謀やリーダーシップ不足の巻き添えとなったような形だ。しかし、記者会見では「過去の総合小売業を目指す方向からの転換にめどが立った」「国内外のコンビニ事業にフォーカスし、食を中心とした世界トップクラスのリテールグループを目指す」「そのために、今までと異なる施策が必要なフェーズに入った」と、社長交代の意義について力説するなど、案外サバサバしていたように見受けられた。
セブン&アイの売り上げは、2024年2月期連結決算で11兆5000億円弱。前期比2.9%減だ。とはいえ国内の小売ではトップであり、NRF(全米小売業協会)によれば、2024年に世界の小売業で8位に入っている。
ところが時価総額は、年商の半分くらいしかない。同じ世界に展開する小売り企業でも、ファーストリテイリングは、年商3兆1038億円に対して時価総額が14兆円超と、4倍以上もある。要するにセブン&アイの株価は安すぎる。
ちなみに、クシュタール社は2024年4月期の売上高が693億ドル、10兆円以上である。時価総額は6兆円以上で、セブン&アイより売り上げが少ないのに、時価総額では上回っている。2021年の東京五輪では、日本のコンビニが世界から評価された。弁当やおにぎりなどのレベルは高い。円安の影響もあるが、世界的にブームである和食の発信地の一つとして、セブン&アイの株価は実力に釣り合っていない。異常な低さ、とまでいえる。
ファミマとセブンが「伊藤忠化」する――? 経営陣による「9兆円」MBO、日本史上最大の企業買収劇のゆくえ
やっぱり、セブン&アイの買収提案は悪い話なのか いやいやそうでもない、これだけの理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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