あの企業の20代エース社員にも「新卒1年目」の頃があった。挑戦、挫折、努力、苦悩――さまざまな経験を乗り越えて、今の姿がある。企業に新たな風を吹き込み、ビジネスの未来を切り開く20代エース社員の「仕事」に迫る。
2022年4月、クラウド会計ソフトを展開する弥生に新卒で入社した中島樹さん(Sales and Marketing本部)は営業経験ゼロの状態からわずか2年足らずで、同社の営業の中で新規契約達成率1位という結果を残した。
営業として輝かしいスタートを切ったが、実は彼自身もともと営業職を希望していたわけではなかったという。入社時はマーケティング部門を希望していたが、経験を積むという理由から営業職に配属された。同社では、新入社員は開発かマーケティング(営業含む)に配属される。後者の場合は営業経験を積んだ後、適性に応じてキャリアを進める仕組みがある。
営業未経験の中で、どのように税理士や公認会計といった専門家を相手にデジタル化・DXの提案を重ね、結果を出したのか。「顧客を過度にリスペクトしない」という営業スタイルの理由や成功の秘けつ、そして今後のキャリアの展望について話を聞いた。
まず、中島さんが担当していた神奈川エリアの会計事務所を取り巻く当時の状況はどうだったのか。
「業務効率化と付加価値向上の2軸で課題を抱えている会計事務所が多いですが、新しいテクノロジーということで、クラウド導入に慎重な事務所が多いのが実情でした。これはAIに対する不安と似ていると思います。新技術の本質を理解せずに現状維持を選びがちです」と指摘する。
決してDXが進んでいるとは言えない業界だった。例えば、会計事務所とその顧客先との間でUSBメモリでデータをやり取りしている事例も少なくないという。中島さんのミッションは、会計事務所に対して自社サービスを販売・利用定着支援をしていくことだった。
主なサービスは3つ。会計事務所の記帳をデジタル化する「記帳代行支援サービス」、インボイス制度と電子帳簿保存法に対応した「スマート証憑管理」、そして会計事務所向けの弥生会計製品である。特に当時はインボイス制度などの法改正が進む中で、前者2つのサービスへのニーズは高まっていた。
会計事務所への提案にあたり中島さんは独自の戦略を立てた。その背景には「短期間で成果を出して自分の望むキャリアに進みたい」という強い決意があった。「最初から目標を高く設定し、誰もが納得する結果を出すことにこだわりました。そのためには従来の方法にとらわれない営業スタイルが必要だと考えたんです」
その営業スタイルの一つが「しらみつぶし」だ。実はこのアプローチは、緻密な現状分析から生まれた戦略だった。中島さんによれば、神奈川エリアは過去の営業活動で一部の顧客への提案はしていたものの、その他の大多数の顧客とは関係構築が十分でなかったという。
「見落とされていた潜在顧客層に可能性を感じました」と語る中島さんは、インサイドセールスと連携しながら、メール配信ツールなどを活用しエリア全体へ営業範囲を拡大。効率を重視し、優先順位をつけて一部の顧客に絞る営業が多い中、一見非効率にも思える取り組みを継続した。
営業配属から最初の数カ月は契約数が伸び悩んだものの、3〜4カ月を境に月5件以上の契約を獲得できるように。それから急速に全国トップの座へと近づいていった。
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