契約獲得数が急増した背景には、もう一つ中島さんの特徴的な営業スタイルがあった。それが「顧客を過度にリスペクトしない」という原則だ。
「税理士や公認会計士という専門家に対する敬意から、意見を控えめに伝え、時に本来すべき提案を遠慮してしまうという営業を目にしていました。だからこそ、私は全力でぶつかろうと決めたんです」と当時を振り返る。
なぜ、あえて「遠慮なし」の姿勢を貫いたのか。その説明は実に理にかなっていた。「税理士事務所の経営者は、多忙な中で貴重な時間を割いてくれています。その短い時間を世間話で終わらせるのではなく、真剣勝負すべきだと考えました。もし嫌われても、それは仕方がないと割り切っていました」
税務の専門家相手に若手が勝負できる領域は限られているが、中島さんは自らの強みを見極めていた。「税務知識では専門家には及びません。しかしITやDX領域では私たちに優位性があります。その強みを生かした提案と、適切な情報提供に徹しました」と力強く語る。
中島さんのこうした姿勢は、デジタル化・DXに慎重な顧客の信頼獲得に効果的に働いた。専門性と誠実さを貫くことで、当初は懐疑的だった顧客との間にも確かな信頼関係を構築していったのだ。
顧客と真剣勝負する中島さんの土台には、徹底した自己研さんがある。営業経験ゼロからのスタートで知識不足に直面した彼が選んだのは、合理的かつ戦略的な学習法だった。
メンターとの日次の1on1では「税理士の方から、こう質問されて答えられなかった」といった現場の課題を徹底的に解消。同時にYouTubeや動画学習プラットフォームのUdemyなどを活用して営業スキルを体系的に学び、それらを日々の実践で検証していった。
さらに、自身の学びを組織内で共有することを習慣にした。「Slackの営業チャンネルで成功事例や学びを投稿し、知識を定着させると同時に自分の存在をアピールしていました。リモート環境では誰がどんな仕事をしているか見えづらいので、意識的に発信し続けることで社内での存在感を増すという思惑もありました」
こうした日々の小さな改善に加え、「まずやってみる。弱音を吐いても、結果を出すためにコミットする」と話すように、結果につながる行動を重ね続けることの重要性を中島さんは認識していた。必要なアクションを見極め、それを愚直に実行し続けるからこそ、数カ月で結果を出すに至ったのではないか。
2024年4月からは営業企画部門に異動し、新規事業の企画に携わっている。「実は社会人3年目のタイミングで独立か転職を考えていましたが、現部署の上司から声をかけられ、弥生に残って新規事業に挑戦することを選びました」と中島さんは語る。
現在は会計事務所の課題解決に向けた新サービスの開発に従事。「今は小さな船に乗っている段階ですが、この経験を生かして将来は自分が船長となって新しい事業を企画したい」と意欲を見せる。営業での成功体験を糧に、さらなる高みを目指す25歳の挑戦は続く。
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