確かに、かつて家電メーカー大手としてしのぎを削ったライバルであるソニーが、2001年の「ソニーショック」に端を発した長い冬の時代を乗り越え、今や時価総額は20兆円超に達しているのに対して、パナソニックHDのそれは20年前からほとんど変わらない、約4兆円で推移しています。
その開きたるや、実に約5倍。ソニーがこの20年間で、スクラップ・アンド・ビルドおよび選択と集中を繰り返し、今や家電メーカーからグループの総力を結集して総合エンタメ企業へと生まれ変わったのに対して、パナソニックHDはいまだに明確な進路が見えていないのです。
そのパナソニックHDを今こそ変えるのだと、楠見社長が掲げた大改革の骨子は、先の3つの課題に対して「重点投資領域としてソリューションに注力する」「課題事業の施策実行により競争力を強化する」「リーンな(無駄がない)本社・間接部門を実現して固定費構造を改革する」というもの。
中でも注目は、課題事業の施策実行として、持株会社化の際に家電復建を賭けて創設した事業会社パナソニックを一旦解消して再構築するという点でしょう。
現在5つの分社から成っている事業会社パナソニックは、再構築により家電の「スマートライフ」、空調などの「空質空調・食品流通」、照明の「エレクトリックワークス」(それぞれ仮称)の3事業会社に再編するとしています。3社の中で最大の目玉は、テレビ事業を含め白物・黒物国内販売部門のBtoC家電事業をまとめる、スマートライフ社でしょう。
パナソニックHDの祖業でありながら現状で最も課題山積の事業であるわけで、これをいかに再生あるいは整理するのかが、今回の改革において最も重要なポイントでもあるのです。
家電事業の再建について、楠見社長は「ジャパンクオリティをチャイナコストで実現することが必要」と説明しています。さらに、事業会社から「パナソニック」という名前が消えることや、テレビ事業の売却・完全撤退も辞さないという発言もあり、今回の改革に賭ける並々ならぬ決意が感じられるところです。
ではこの大改革は、果たして成果を出せるのでしょうか。それを考える上で気になるのが、同社の組織改革の歴史です。パナソニックは、その歴史自体が組織改革の歴史ではないかといえるほど、事あるごとに組織改革を実行してきました。
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