このように、わが国の経済が低成長期に移行した2000年以降の四半世紀における同社の組織改革の変遷を見ると、創業者由来の事業部制に翻弄されながら、結果的に経営が足踏み状態を続けてきました。その観点からは、「神様(=松下幸之助)の呪縛」ともいえそうな「経営の迷走」から脱却できるか否かが、パナソニックの長期停滞から成長軌道への変革へのカギを握っているのではないかと思えるのです。
しかし今回の改革案を見てみると、まだいくつかの点で「呪縛」を解く力強さとスピード感に欠けていると感じさせられます。
「ソリューションに注力する」とした「重点投資領域」ですが、まず何よりソリューションビジネスへの注力という考え方自体が、これまでの延長線に過ぎず新鮮味に乏しいといわざるを得ません。また「エネルギーソリューション、SCMソリューションを中心としてAI活用により」という方法論も具体性に欠け、とりあえず流行りのAIにも言及しましたという程度に聞こえてしまう物足りなさが漂っているのです。
「固定費構造を改革する」という点に関しても、事業部制やカンパニー制を展開するたびに何度となく問題点として挙げられてきたものであり、一度はそれがゆえに事業部制を廃止した過去があったわけです。それでも再び事業部制に回帰した裏には、メリットの方が大きいと考えたからではなかったのでしょうか。
この点を問題視する今さら感の強さには、あらためて「呪縛」の存在を感じさせられるところです。今一度ゼロベースで、望ましい組織体制の在り方を考える必要性もあるのではないかと考えます。
コストの問題に関しては、製造工程において「ジャパンクオリティをチャイナコストで実現することが必要である」と明言しているわけですが、固定費構造の改革だけでチャイナコストが実現できるとは到底思えません。製造コスト削減において、いかなる策を考えているのでしょうか。
DX・AI活用といった言葉は使いながらも、この点において具体策が見えておらず、現状では絵に描いた餅の域を脱していない、といわざるを得ないでしょう。
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