私が最近感じるのは「値上げをして、本当にテーマパークの人は減っているの?」ということだ。今はTDRにせよUSJにせよ、実際にテーマパークに行くと基本的に「激混み」状態である。私は昨年2回ディズニーランドを訪れたが、どのアトラクションも長蛇の列で、中には120〜150分待ちのものもあった。
優先搭乗券である「ディズニー・プレミアアクセス」を使えばいいのではと思われる方もいるであろうが、ディズニーランドだとその適用対象のアトラクションは3種類のみ。それ以外のアトラクションでは、ものによってはかなり並ぶ必要がある。アトラクションの列だけでなく、来園者自体が多いのは変わらず、「結局、単にチケット料金が上がっただけか?」と思ってしまった。
ファクトブックによると、来場者はコロナ禍を挟んで10%ほど減っているが、正直「快適」とは程遠い状態だ。そもそも、もともとの来場者が相当な量であったため、そのうちの10%が減ったとしても、私たちからすればさほど違いはないと感じるのが正直なところ。この落差で、人々がテーマパークに失望してしまうことは十分に考えられるのだ。
ここ数年はまだ消費者も付いてきているが、彼・彼女らに「この値段で行くほどでもないな」と思われたら、おそらく離れていくのは早い。長期的な目線で消費者を喜ばせ続けることができるテーマパークを作れるのか、それが問題になるだろう。
極論ではあるが、もし値上げによる客単価とテーマパークの快適さを両立したいのなら、もっとチケットの値段を上げたり、課金コンテンツを増やしたりして、徹底的に値上げするべきではないだろうか。現状では各テーマパークとも中途半端な状態になってしまっており、単なる値上げを行っただけの状態になってしまっているように感じる。
ただ、そうやって値上げをすると、消費者からのイメージが悪くなるということは十分考えられる。こうした値段設定は非常に難しい。全体的な物価上昇と連動した賃金上昇などが起こっていれば不満の声もほとんど出ないであろうが、そこはテーマパークではなく、政治が解決すべき問題である。
なるべく多くの人が、より良い環境でテーマパークを楽しめる日はやってくるのだろうか。今後の各テーマパークの値上げ戦略を注視したい。
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
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