では、こうした値上げによるメリットはどこにあるのだろうか。1つは、値上げを行うことによって、来場者の満足度が相対的に高まることだ。
チケットが安いために園内に多くの人がいて、何をするにしても並ぶ……となると満足度は上がらない。場合によっては「疲れるだけだし、もう行かなくていいかな」と思われてしまいかねない。
一方で、チケット料金を値上げし、ある程度園内が空くようになれば、顧客はそれだけ多くのアトラクションに乗ることができ、十分にパークを楽しめる。企業側にとってみれば、顧客が浮いた時間でグッズを買ったりレストランに行ったりする時間を増やすことができるため、客単価も上がる。論理的に考えてみると、消費者・企業側にとってWin-Winな戦略なのである。
事実、こうした値上げにも関わらず、USJの客足はコロナ禍前をしのぐ水準にまで回復しており、ディズニーの客単価がしっかり上がっているのは前述の通りだ。
さらに、値上げ戦略がテーマパークの「ブランディング」にもなることを指摘しておきたい。
『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』(ジョン・ムーア著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)によると、スターバックスは安易な値下げ戦略を行わなかったことで、そのブランド価値を高めたという。色々な意味で「安売り」しないことで、消費者から特別なブランドだと認知されるようになったのだ。
デフレ文化が染み付いている日本人からすると「値下げ=善」のように思われている節があるが、むしろ値下げをしない方がいいこともある。特にテーマパークのように「特別感」を演出するのが大事な場所で、その重要性は高まっている。
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