消費税10%時代は終わるのか 減税論が企業戦略に与える波紋スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2025年04月16日 10時29分 公開
[窪田順生ITmedia]

ほとんどが消費につながらない現実

 東京財団政策研究所・研究主幹の森信茂樹氏が書いた「欧州の消費税減税はどう評価されているのか」という記事を引用する。

引下げの効果についてシンクタンクの評価を見ると、消費税の引下げによる消費増の効果は限定的で、期待された効果は得られなかったと結論している。その主な原因は、引下げ分の一部が企業の手元に残ったことを指摘している。(Ifo 2021年「Has the Reduction in Value-Added Tax Stimulated Consumption?」)

 また英国ガーディアン紙(2020年7月14日付)は、「多くの企業は消費税引下げ分をポケットに入れる予定だ。ナショナルギャラリーは減税分を美術館の修復に充てる予定だ」と伝えている

賃上げが進まない中で……(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 「消費税の引き下げ」によって多くの企業はその引き下げ分の利益を手にした。しかし、その多くは市場の消費増につながることなく、内部留保などで手元資金として確保されてしまっている。これも冷静に考えれば当然だ。自力で上げた業績による利益ではないため、その使い道には慎重にならざるを得ない。

消費税の減税=消費につながるわけではない(画像はイメージ、出典:ゲッティイメージズ)

 つまり、個人にしろ法人にしろ先の見えない時代、天から降ってきたあぶく銭を豪快に使うケースは少なく、ほとんどは個人や法人の「貯蓄」に回って、経済への波及効果は限定的なのだ。

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