三菱UFJや三井住友、みずほ銀行が「利上げ」により過去最高益を更新し、証券会社などの業績も好調に転じるなか、利上げで価格が下がる債券運用に偏重した農中は2024年度においては「一人負け」に近い状況に陥った。
ポートフォリオ理論によれば、組入資産の種類が多様化するほどポートフォリオ全体のリスクは低減する。その逆で、低リスクだと思っていても債券一辺倒になってしまえば、当初の利回りよりはるかに強いインフレが確認できると、今回のように資産が大きく目減りするといったデメリットが発現してしまうのだ。
市場関係者の中には、株式などの資産クラスもバランスよく配分すれば損失を抑えられたのではという指摘もある。実際に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は資産の約半分を株式で運用し、金利上昇期にも安定した運用成果を上げている。農中のポートフォリオも同様の柔軟性を持つべきであると筆者も考えている。
農水省の有識者検討会も、農林中金に対し、農業・食品関連企業への株式投資拡大など、より柔軟な運用を提言している。しかしバーゼル規制はもとより、農林中央金庫法がある以上、農林中金が直ちに大きな資産配分の変更に踏み切るのは難しいだろう。
農林中央金庫法が今の形に改正されたのはバブル経済が崩壊し、失われた30年真っただ中の2001年である。デフレ経済下においては債券運用も有効だが、インフレになってきた足元においては債券のみの運用はリスクがかえって大きくなりそうだ。
今回の米国債騒動がトランプ関税政策を止めたかどうかは不透明だ。しかし、「この相場で大損したとしたら農中だろう」と思われている時点で、それだけのリスクを農中は背負っているともいえるのではないか。
農林中金は今後、時代遅れの投資制限を見直し、債券偏重から脱却する運用戦略を模索する必要に迫られそうだ。
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