服装の話をする前に「権威性」について簡単に触れたい。
上司から叱られても聞く耳を持たない社員が、社長から同じことを言われたらどうだろうか。おそらく、たちまち態度が変わり、言うことを素直に聞くようになるだろう。これは、人間の心理に「権威性」という心理効果が働くからだ。
その人が持つ肩書や社会的立場が、無意識に人の心に影響を与える。心理学者のロバート・チャルディーニは、権威を持つ人の言葉がいかに人々の行動に影響を与えるかを研究した。
米国のある大学での実験では、普段着の若者が先生役をしたときと、同じ人物がスーツを着て「MITの数学教授」として現れたときでは、学生たちの反応が大きく変わった。服装だけで信頼度が変わるのだ。
これはユニフォーム効果といい、ビジネスでも活用されている。研究開発型の企業では、白衣を着た技術者の説明に説得力が増すことが分かっている。
「中身で勝負」という理想を掲げたい気持ちは分かる。しかし営業パーソンの服装には、知っておくべき心理効果がある。具体的な事例とともに解説しよう。
きちんとした服装は「この人は信頼できる」という印象を与える。特に初対面では、見た目の印象が大きな割合を占める。
ある保険会社の調査によると、営業パーソンの服装が整っているかどうかで、契約率が約15%も変わったという報告がある。同じ説明内容でも、服装次第で信頼度が変わるのだ。
ある新人営業は契約が取れず悩んでいたが、上司のアドバイスでスーツの質を上げたところ、わずか2カ月で成績が劇的に向上した。顧客からは「前よりも話が信頼できる」との声が寄せられたという。
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