このような松のやの攻勢に対して、かつやはコスト高対策も踏まえてどう対抗していくのか。
4月1日から店舗・ネット注文で常時100円引きクーポンが使える「かつやアプリ」を全国展開した。かつやでは、会計時に配布している100円引きクーポンの利用率が約65%と非常に高い。一方で「かつやで食事したいが手元にない」「有効期限が切れたため来店をためらう」といった声も多かった。そうした不満を解消するため、スマホアプリを開発した。初週で70万ダウンロードと、好調なスタートを切っている。
店舗開発でも、4月18日にオープンした千葉県の幕張西店は、初の「前払いセルフ式」を導入した。注文時に会計を済ませ、商品提供口で受け取る形式で、松屋フーズホールディングスの店舗でも採用されている。これにより、従来よりも従業員数を減らせる。低価格も維持しやすくなるはずだ。
商品面では、かつやとしては高額だが、ボリュームたっぷりで好評な、期間限定の「全力飯」シリーズの継続とさらなるパワーアップが期待される。筆者の記憶ではコロナ禍にテークアウト用として開発されたラインアップだが、昨今はイートインでも人気が高い。ビジュアルに迫力があって、毎回のように話題になっている。
例えば3月28日から販売した「ホルモン焼きうどんとチキンカツの合い盛り」は、ご飯の上に焼きうどんが乗る“炭水化物2階建て”。健康志向を全否定したようなある意味潔い企画で、強烈な印象を残した。
そして、4月25日に発売した「かつやの中華ざんまい丼」も、エビチリに回鍋肉、油淋鶏を、1つの丼で一度に食べられる新発想のインパクトがある丼だ。中華は他にも麻婆豆腐、天津飯など組み合わせられそうな料理があり、今回成功すればシリーズ化も可能だろう。
このような、かつやしかやらないような全力飯の商品を今後も続けていければ、コアなファンはずっと支持していくのではないだろうか。
ここまで述べてきた改革によるかつやの逆襲に期待したい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
「かつや」追う「松のや」の特徴は? “破格”250円朝食も 似て非なるそれぞれの戦略
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