この記事は『自動車ビジネス』(鈴木ケンイチ/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
かつて、日本メーカーの多くは、世界戦略車やグローバルカーという呼び名で、日本と世界の両方で売れるクルマを熱心に作っていました。いまでも、トヨタの「カローラ」やホンダの「フィット」などは、世界中で同じモデルが発売されています。
しかし、その一方で、世界各地の市場は、それぞれに異なる文化と風土があり、クルマのニーズは市場ごとにまったく違っていたりします。そのため、最近では、どの自動車メーカーも、現地のニーズに合わせた専用モデルを数多く開発するようになりました。特に日本の自動車メーカーは熱心に、日本にはない、現地向けのモデルを作っています。
例えば米国では、日本にない大型SUVやピックアップトラック、中国では電気自動車(BEV)、アセアンでは小型車やミニバンが、現地専用モデルとして作られています。名前を挙げれば、米国向けのトヨタ「タンドラ」「タコマ」「4ランナー」「ハイランダー」、ホンダの「リッジライン」「パスポート」、日産の「アルマダ」「フロンティア」「パスファインダー」などがあります。また、ホンダの「アキュラ」や、日産の「インフィニティ」といったサブブランドのモデルも、日本に馴染はありません。
現在の日本の自動車メーカーは、その販売の半数以上を海外に頼っていますから、その分だけ日本にはない海外モデルが多くなることになるのです。
そんな中でも、特に注目すべき存在があります。それがトヨタのIMV(Innovative International Multi-purpose Vehicle:イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)と呼ばれるモデルたちです。
これは2004年から市場導入されたシリーズで、ピックアップトラック「ハイラックス」を基本に、ミニバン「イノーバ」(キジャンと呼ばれる地域も)、SUVタイプ「フォーチュナー」を兄弟車としてそろえるというものです。画期的であったのは、日本以外の海外で生産し、世界140カ国で販売したというところです。
従来のように「日本で生産して、海外に輸出する」や、「ニーズのある現地で生産して、現地で販売する」ではありません。「海外で作って、海外で売る」というスタイルを取ったのです。生産は、おもにアセアンでおこなわれました。そして、このIMVシリーズが大ヒットしたのです。
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