ここまで解説してきて、改めて考えてみましょう。「デジタル人材のデジタルスキル」とは、この3階建てのどの部分に該当するのでしょうか?
総務省の資料を見ると、デジタル人材は、
――のように分類されていて、それぞれに育成の方針が示されています。
一般行政職員の育成方針では、「デジタルツールを活用する能力」という文言があります。デジタルツールにも幅があるのですが、例えばWord、ExcelなどのOfficeソフトやメール、Webサービスの利用だとすれば、私のスキル構造ならば、ビジネスパーソンとして必要なスキル(1階)に該当します。
注意しなければならないのは、DX推進リーダーや高度専門人材であっても、これらのスキルは必要ということでしょう。一般行政職員の上位互換のような雰囲気がありますが、彼らが本当にそのスキルを得ているのかは、常に確認が必要です。
では、「デジタルツールの活用」以外のデジタルスキルとはどういうものでしょうか? システム設計? プログラミング? ネットワーク? セキュリティ?
総務省の資料では、これらのスキルをその難易度にあわせて、DX推進リーダーや高度専門人材に割り当てていますが、なんだかしっくり来ません。おそらくこのスキル標準を自治体に当てはめようとした方は省庁の方か民間企業のコンサルタントの方なのでしょう。
残念ながら自治体は一般職員の職階に応じて裁量が変化することはありません。1年目の職員も10年目の主任もできることは同じなのです。したがって、一般職員の中で、能力に応じた段階を設定しても、うまく機能しません。
そもそも、DX推進リーダーは全職員から選抜された人員であるように規定されていますが、見方を変えると「DX推進リーダーでなければこれらのスキルは不要」という解釈をされてしまう危険性があります。
リーダーであろうとなかろうと、デジタルであろうとなかろうと、新人だろうが、ベテランだろうが、仕事として必要になれば、そのスキルを得るべく努力するのは同じなのではないでしょうか。その意味で、これらのスキルは所属部署特有のスキル(3階)に該当する、というのが私の考えです。
では、高度専門人材はどういう役目であるべきでしょうか。
「デジタルツールの活用」以外のデジタルスキルの全てを有し(あるいは有するべく日々努力し)、3階のスキルが必要となった職員に対して、その習得を支援するというのが、組織として求められる役目なのではないかと思います。
なお、デジタル技術の進歩や変化に応じて、1階のスキルで求められる範囲がどんどん変化していることにも留意すべきでしょう。
生成AIなどの利活用も、ビジネスパーソンとしての素養になる時代であれば、当然全ての職員が得るべきスキルになるということです。
この話題は継続して考えていきましょう。次回は、デジタル人材育成に関連して、組織としての成熟度について考えてみたいと思います。
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