それでも、さまざまなメディアが麻布台ヒルズを批判したくなるのは理解できる。なぜなら、このまま森ビルがその周辺を再開発していったとしても、明るい未来が待っているように感じられないからだ。
森ビルはどことなく嫌われている印象がある。そして、私自身もどことなく嫌っている。その理由はなぜなのか。
実は、現在の森ビルの開発フォーマットを築いたとされる森稔氏の著書『ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新聞出版刊)を読んでいて、1つ気付いたことがある。著書の中で森氏は、建築家ル・コルビュジェの『輝く都市』という都市計画に大きな影響を受け、それを現代において成し遂げようとしたのが、一連のヒルズ開発であると述べていた。
コルビュジェの『輝く都市』は、工業化が進んだ近代において、いかに効率よく、かつ合理的に、多くの人が都市に住めるかを考えて作られたものだ。言い換えるなら、できる限り多くの人が1か所に住み、少ない移動距離でさまざまなことが行えるように高層ビルを建て、人口を集中させるというものだ。
麻布台ヒルズの「森タワー」は330メートルで、日本で一番高いビルであり、それが売りの1つだ。「第2六本木ヒルズ」計画でも、それに近い300メートルを超えるビルが建てられるという。森ビルの計画は、確実にコルビュジェの理想として掲げた都市計画を踏襲している。
近代以降、コルビュジェの都市計画のように、合理的であることや効率的であることが好まれるようになった。その都市計画では、配置するもの全てが、「意味」や「機能」を持っている。ビルを高く建てるのは、それが人を集めるのに最も効率が良いからだ。そして、全ての都市は、未来に向けて成長し、発展していくという、究極の「意味」を与えられていた。
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