再開発に成功した街・下北沢 高層ビルで安易に”稼がない”発想はなぜ生まれたのか(1/5 ページ)

» 2025年03月20日 08時00分 公開
[谷頭和希ITmedia]

 再開発に成功した街は? そう問われたら、私は迷わず「下北沢」と答える。

 下北沢では2010年代の後半から複数の再開発事業が行われており、2025年度末の駅前ロータリーの整備で、そのほとんどが終了する予定だ。まだ計画の途中ではあるが、再開発の「成功例」として取り上げられることが多い。例えば、NHK取材班が全国で進む再開発の現状を追った『人口減少時代の再開発:「沈む街」と「浮かぶ街」』では、今後の再開発のあるべきモデルとして下北沢が紹介されている。

 下北沢の再開発はどのように進められたのか。成功要因はどこにあり、それを他の街で展開するにはどうすればいいのか、分析してみよう。

下北沢に行ってみた

 まず、再開発の現状を探るため、下北沢に足を運んだ。地下深くにホームがある小田急線の駅を降りると、駅前広場には若者がかなり集まっていた。

下北沢駅(筆者撮影)

 駅のすぐ近くには「シモキタエキウエ」や「ミカン下北」という商業施設がある。これらの特徴は、高層ビルではないこと。近年の再開発では、駅前に高層ビルが建てられ、そこにオフィスや商業施設などのテナントが入ることが多い。しかし、下北沢はそうではないのだ。

ミカン下北(筆者撮影)

 さらに、歩いていて気付くのが“座る場所”の多さだ。ミカン下北は入り口の階段に座れる場所があり、そこに座っている若者も多い。再開発が進みながらも、座れる場所が激減している渋谷とは大きく異なる。

ミカン下北の入口の階段には座れる場所が多い(筆者撮影)

 その他、敷地面積約2万7500平方メートルの線路跡地を開発した「下北線路街」には、13の施設が整備されている。そこには、さまざまなテナントが入った「BONUS TRACK」や「reload」など、チェーン店がほとんど入居しない、個性的な商業施設が立ち並ぶ。

BONUS TRACKの様子。歩いていて楽しい(筆者撮影)

 これらはほとんどが2階建てだ。低層であることで、下北沢に昔からある商店街の景観とも自然になじみ、街にうまく溶け込んでいる。見上げる必要のない“人間サイズ”の街で、歩いていて楽しいと感じた。

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