では、下北沢のような「一味違う再開発」はどのようにして生まれたのだろうか。そこには2つの要因がある。
1つ目は、再開発の事業者である小田急電鉄が採用した「支援型開発」と呼ばれる手法だ。トップダウンで街を作るのではなく、あくまでも小田急電鉄側は地元住民の意向に対して「支援」を行うというスタンスを取った。地元住民たちの街に対する意向をヒアリングした上で、彼らの望む街を形にしていったわけだ。
前述のNHKの取材によれば、その中には「チェーンストアはいらない」「街に緑を増やしたい」などさまざまな意見があり、それらが集約された再開発プランが作られた。その結果、再開発された区画には大手チェーンはほとんど入っておらず、緑化なども大胆に行われている。
2つ目は、物理的な制約だ。再開発で高層ビルを建てれば、それだけ床面積が増えてオフィスや商業施設を入居させられ、収益性が上がる。しかし、下北沢の場合、こうした再開発でよくある収益の上げ方が難しかった。下北沢駅周辺は地下に線路がある。そのため、建物の基礎を深く掘れず、高層ビルを建てることが難しかったのだ。
NHKの取材に対し、開発を担当した小田急電鉄の向井隆昭氏は「高さのある建物を作れない=収益性はあまり高くないと考えていました。さらに、大手のチェーン店や大手スーパーへのヒアリングで、需要が見込めないので出店できないという回答もあり、正直どうすべきか悩んでいました」と述べている。
このような制約の中で、どのように収益を確保しつつ開発を進めるか。そこで小田急電鉄が生み出したのが、1つ目に挙げた「支援型開発」だった。物理的な制約が地元住民との対話を生み出し、他の場所とは異なる再開発の風景を作ったのである。
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