ここまでシネコンで公開することを例に解説してきましたが、作品によってはもちろん、公開初週の成績にすぐに左右されないミニシアター(1〜3スクリーンの単館劇場)でじっくりと“作品”として公開すべきであるわけです。
しかし、都内のミニシアターは1スクリーンあたり約50席から350席です。1日4回〜5回上映して週末3日間、すべて満席になったとしても興行成績は限られます。アート系の作品も昨今はシネコンでも多く上映されるようになりましたので、インディの配給会社からすると立地のいい、大きなスクリーンのシネコンで上映できるのであれば、そちらを選択することも理解できます。
なぜならコロナ禍前からミニシアターの運営は厳しい状況が続いているからです。要因としては、アート系の洋画の興行力がそもそも落ちたこと、平日の興行を支えていた高齢者層がコロナ禍以降映画館に戻ってきていないこと、ここでしか上映していない映画を鑑賞する価値が若者を中心に低下したことなど、いくつかの要因が挙げられます。
映画ジャーナリスト、プロデューサー
1974年東京生まれ。1997年に文化通信社に入社し、映画業界紙の記者として17年間、取材を重ね、記事を執筆。邦画と洋画、メジャーとインディーズなどの社長や役員、製作プロデューサー、宣伝・営業部、さらに業界団体などに取材し、映画業界の表と裏を見てきた。現在は映画の情報サイト「映画.com」の記者のひとりとして、ニュースや映画評論などを発信するとともに、映画のプロデュースも手掛ける。プロデュース作品に『死んだ目をした少年』『ポエトリーエンジェル』『踊ってミタ』などがある。田辺・弁慶映画祭の特別審査員、京都映画企画市の審査員も務める。
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