……といろいろ言わせていただいたが、日テレが今の方針を転換する可能性は低い。『週刊文春』などの週刊誌にコンプライアンス違反の内容が明らかになったところで、国分さんも日テレも「プライバシー」の一点張りでダンマリを決め込むはずだ。つまり「逃げ勝ち」だ。
「なーんだ、じゃあ日テレの“語らぬ会見”は成功ってことじゃん」と思うかもしれないがとんでもない。
「プライバシー」というものは便利で実はあらゆるものに使える。コンプライアンス違反だけではなく、経営者や社員の不祥事にも適応できる。犯罪者だって人権があり、プライバシーはあるのだ。
つまり、日テレは自分の首を絞めるような「悪しき前例」をつくってしまったのである。
「それに関してはプライバシーでお答えできません」
「事案の特定につながる情報拡散のリスクがあるのでこれ以上はお話できません」
「コンプラ違反した役員にもプライバシーがありますのでご配慮をお願いします」
そこでもし文句を言うメディアがいたらこう言えばいい。
「日本テレビという報道機関でもプライバシーを重視して何も説明しませんでしたよね。プライバシー侵害につながる恐れもあるような情報を、あなたはこのような公の場で明かせというのですか? 報道の自由のためには、プライバシーなど関係ないとおっしゃるんですか?」
このように「プライバシーさえ持ち出せば、マスコミ記者の質問なんてまともに答える必要がない」という、報道機関への信頼を揺るがすような風潮が広まる可能性がある。
報道機関のトップである福田社長でさえ、記者からの質問にまともに答えていない。あれが許されるのなら、世の企業トップが同じことをしても責められる筋合いはない。
企業危機管理にかかわるビジネスパーソンの皆さんはぜひとも日テレを見習って、 “説明を一切しない会見”を参考にされてはどうだろうか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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