日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「こんな会見なら開かないほうがマシ」
「24時間テレビの寄付金使い込みや『セクシー田中さん』の原作者の件では会見を開かなかったのに、タレントの不祥事では社長が先頭に立って“もみ消し”を図るのか」
日本テレビの「説明ゼロ会見」が批判を浴びている。TOKIOの国分太一さんに「重大なコンプライアンス違反」が確認されたとして、番組降板を決定した日本テレビの福田博之社長が緊急会見を開いたのだが、「プライバシー」を理由にまったく情報を出さなかったからだ。
福田社長は集まった報道陣の質問に対して、「申し上げられません」「お答えできません」を延々と繰り返した。報道によれば、その数はなんと36回にのぼったという。
もちろん、記者からは「何のための会見だ!」「こんなの通用しませんよ!」などと怒声も飛んだが、国分さんも含めた複数の人間のプライバシー保護のためということでノーコメントを貫いた。ここまで情報を一切出さないことで逆に新たなリスクを招くのではないか、という“記者からの説教”にもこんな風にかわした。
「それ以上に事案の特定につながる情報拡散のほうがリスクがあると判断した」
さて、このような話を聞くと、企業危機管理を担当しているビジネスパーソンの中には、「日テレの危機管理は最悪だな」とあきれる人も多いだろう。実際、今回の対応を酷評している危機管理の専門家も多い。
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