さて、リファラル採用において成功報酬を紹介した人に払う場合には、いくつか要件があります。最も重要なのは、リファラル採用に関するインセンティブの支払い時期や支給額、その他の支払い条件を必ず就業規則や賃金規定に明記しておくことです。
リファラル採用に関するインセンティブは、「企業に人を紹介して得た報酬」となります。職業紹介についてのルールを定めている職業安定法という法律で「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」(第30条)と規定されています。
インセンティブを支払った企業も違法だと見なされる恐れがありますが、給料や賞与として支払う場合は例外として認められています。その場合は、就業規則などに明記しなければなりません。労働基準法においても、賃金や給料に関する事項は必ず就業規則に明記しておかなければならないと定められています。賞与扱いにする場合は、賞与支払届を出して社会保険料を控除しなければなりません。
リファラル採用に伴うインセンティブを就業規則や賃金規定に記載しておけば、法律に抵触しないかというとそれだけでは十分ではありません。一つはインセンティブが高額の場合、人材紹介業に該当すると判断される可能性があります。
転職エージェントを利用した場合の成功手数料は、入社した人の年収の30〜50%程度と設定されることが多いので、それよりも低い金額に抑えるのがポイントです。インセンティブが100万円を超えるような制度は避けた方がよいでしょう。
もう一つの留意点は、1人の人が複数の人を継続して紹介するような状況です。事業が成功したスタートアップ企業などは、複数の人を採用しなければならないときがありますが、短期間で複数の人を紹介・採用してインセンティブをもらうような場合も注意しなければなりません。一人当たり2回までといった制限も設けた方がよいでしょう。
労働人口の減少に加え、大企業も活発に転職市場に参入している昨今、ベンチャーやスタートアップ企業においては、新卒、求人媒体や転職エージェントなど従来の採用手段では、人を採用できなくなりつつあります。リファラル採用を人材採用の核とする場合は、就業規則などへの記載や正しく運用されているかを確認しましょう。
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