上坂氏がこの厳しい評価を受けたのは、次のステージへの昇進を控えた時期だった。人事からのフィードバックは明確だった。すなわち、「マネジメントと部下育成に課題がある」ということだった。
自身としては、これまでも業績目標を全て達成し、組織に貢献してきたという自負があっただけに、この言葉は重くのしかかった。上坂氏と対話してきたビジネスコーチの橋場氏は「これまでのキャリアで成果を出されている方であり、プライドも当然あるでしょうし、仕事に対して自信もおありでした」と振り返る。
当時の上坂氏のマネジメントは「指示・命令型」だった。
社内で誰よりも「答え」を知っている自分が部下に具体的な指示を出し、その通りに動くことを求める。もし動かなければ、「なんで動かないんだ?」といらだちを感じることもあったという。しかし部下からすれば、やったことのないことをいきなり指示され、完璧にできなければ上司に責められる――。このような、不満が蓄積していく負のサイクルに陥っていたのだ。
上坂氏を決定的に打ちのめしたのは、人事部を通じて知らされた部下からの「生の声」だった。通常、オブラートに包まれるフィードバックも、上坂氏は自ら「生の声を見せてください」と人事部の役員に求めた。そこで明かされた内容は、自身が築き上げてきたと思っていたマネジメントの在り方とはかけ離れたものだった。「もうこんな上司にはついていきたくない」――。そういったコメントの数々を聞き、上坂氏は「かなりしんどい思いをした」と苦笑する。
「業績を上げてもピープルマネジメントができていないという評価が下るなら、業績だけで評価してくれる外資企業に移った方がマシだ。会社を辞めようか」とまで考えたというから、その絶望がうかがえる。
しかしこれをきっかけに、上坂氏は自身のマネジメント方針を見直したいと強く意識するようになった。「なぜ今までコーチングを受けてもマネジメントがうまくいかなかったのか、自分では分からない。社外コーチをつけてほしい」。そして自ら人事に願い出て、ビジネスコーチ社の橋場剛氏と出会うことになる。橋場氏は、「上坂氏ご本人もすごくダメージを受けていらっしゃる中でのスタートでした。まだ信頼関係も築けていないなか、コーチングセッションにおいても、はっきり言って『お手並み拝見』と思われていたと思います」と当時を振り返る。
橋場氏との対話で、上坂氏は「自分としてどうありたいのか」を問いかけられたという。そして複数回のセッションを通して設定されたのが、一見するとマネジメントとは直接関係ないように見える、基本的な「人と人とのコミュニケーションの取り方」に関する5つの行動目標だった。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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