日本のものづくり産業を代表する自動車業界でさえ、このように厳しい現実に直面しているのだ。他のものづくり企業も当然そういう方向に進む。経済産業省発表の「第54回 海外事業活動基本調査概要」によれば、製造業の海外生産比率(国内全法人ベース)は2014年度に24.3%だったが、2023年度は27.2%と着々と上がっている。
つまり今後の日本では、工場や拠点の設置によって雇用を生み出し、周辺地域がにぎわうといった企業城下町型の地域モデルは、成立しにくくなっていくということである。
「とはいえ、熊本のTSMCのように、外資が進出するケースもあるのでは?」という反論があるかもしれない。
そう思う人がいるのも無理はない。台湾の半導体企業TSMCが熊本県菊陽町に日本初となる工場を建設し、九州フィナンシャルグループの試算では熊本県への経済波及効果は10年間で11兆円にも上るという。実際、報道によればTSMC工場周辺の飲食店は大にぎわいで、地価も高騰している。
これは立派な企業城下町の成功例だ。他にもコストコやイケアが進出したことで地域の雇用や経済が活性化したという話も聞く。しかし、だからといって、このようなケースが他でも増えていくのかというと、それは難しい。
日本人の中にはそういうセルフイメージがないだろうが、実は海外資本の受け入れに関して、日本は非常に閉鎖的な国とされている。
海外企業が日本国内に進出して事業を展開したり、既存の日本企業株式を取得したりすることを「対日直接投資」(対内直接投資)と呼ぶ。その対GDP比を国連貿易開発会議(UNCTAD)が世界199カ国で調べているのだが、2023年における日本のランキングは196位。北朝鮮は195位で、日本よりもわずかに外資の受け入れが多かった。
実はこの対GDP比、ある程度高いと生産性が向上することがさまざまな研究で分かっている。ご存じのように、日本人にとって「生産性向上」はスローガンとして叫ばれるだけで、実現には至っていない悲願でもある。
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