年間約2500人の採用力 組織拡大を支える「見える化」と「仕組み化」のDX
【開催期間】2025年7月9日(水)〜8月6日(水)
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【概要】2014年の上場以降、約10年で売上高を50倍に伸ばしたSHIFT。自社にフィットする人材の採用と活躍を促すために、規模の拡大に伴い、あえて「個」に着目した人的資本経営を展開しています。人事データを収集・分析し、施策に反映させてきたユニークな取り組みを紹介します。
デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
2025年6月、任天堂の新型ゲーム機「Switch 2」が発売されました。発売後わずか4日間で世界販売350万台と大人気です。
しかし、この成功の裏で、世界最大のネット通販であるAmazon米国サイトでは、正規の価格でその本体を手にすることができませんでした。この異例の事態は、単なる品薄や流通の混乱では説明がつきません。
Bloomberg誌の報道によると、任天堂は、東南アジアから安価に仕入れた製品を米国で転売するサードパーティセラーをAmazonが野放しにしていることに業を煮やし、同社への製品供給を停止したとのことです。
問題の本質は、単なる高額転売とは異なります。
転売屋であるサードパーティセラーが東南アジアなど他地域で安価に仕入れた本物の任天堂製品を、物価が高い米国のAmazon上で任天堂の希望小売価格を無視して販売していたことにあります。メーカーが各市場に合わせて緻密に構築したグローバルな価格戦略を根底から覆し、ブランドイメージと正規販売網の利益を損なうものです。
両社は報道を否定していますが、Switch 2がWalmart、Target、Best Buyなど米国の主要小売店で正式な発売日から抽選や先着順で販売される中、Amazonだけが1カ月以上も取り残され、7月8日にようやく「招待制」という名の厳格な管理下での販売を余儀なくされました。
この事実は、両社の間に深刻な断絶があったことを雄弁に物語っています。この一件が浮き彫りにした、Amazonが抱える深刻な構造的問題を解説します。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
Amazonがいかにリテールメディア広告市場を支配しているかを数字で見てみましょう。
2023年の米国リテールメディア広告市場では75.2%という圧倒的なシェアを占め、2位のWalmart Connectの10倍の規模を誇っています。まさにAmazon一強です。
2025年のリテールメディア広告収入は693億ドル(約1兆400億円)に達する見込みです。わずか4年前の290億ドルから2倍以上に成長したことになります。この数字は、Amazonにとって広告事業がもはや「サイドビジネス」ではなく、収益の柱となっていることを示します。
一方、競合のWalmartの広告事業収入は2024年度で約34億ドルにとどまり、その差は歴然としています。
なお、日本のリテールメディア広告市場は4692億円(2024年。前年比125%成長)です。EC事業者が4142億円、店舗事業中心の小売業が550億円という内訳です。
楽天などの大手ECプラットフォームを除くと、まだまだサイドビジネスとして成立するかどうかも不明な規模感です。しかしながら、いずれ売上高のなかで一定の無視できない規模になる企業においては、Amazonと同じジレンマが発生する可能性があります。
利益率の高い広告事業の成長はAmazonを潤しました。しかしながら、深刻なジレンマももたらしています。
もともとECプラットフォームとして「地球上で最も顧客中心の企業」を標榜してきた同社にとって、広告収入への依存度が高まることは、その理念との深刻な矛盾を生み出しています。
米国のeコマース市場の約40%を支配するAmazonは、実際の購買データに基づく精緻な広告ターゲティングが可能で、これが他のプラットフォームにはない強みとなっています。
しかし、その代償として何を失っているのでしょうか。
任天堂の一件が示唆するのは、広告料を支払うサードパーティセラーを優遇するあまり、品質管理や価格統制といったECプラットフォームとして最も基本的な商慣行が疎かになっている可能性です。
Amazonにおける偽物や粗悪品の問題は年々深刻化しています。高額な広告料を支払えるセラーは、たとえ品質に問題があっても簡単には排除されないという不信感が広がっています。検索結果の上位は広告枠で占められ、顧客は本当に良い商品を見つけることが困難になっています。レビューの信頼性も揺らぎ、購買体験全体が劣化しているのです。
世界のリテールメディア広告市場の急成長をAmazonが牽(けん)引していることは間違いありません。しかし、広告収入という甘い蜜に引き寄せられ、ECプラットフォームとしての根幹が揺らいでいる現状は、長期的な企業価値を毀損する可能性があります。
かつてAmazonの成功を支えてきたのは、豊富な品ぞろえと信頼できる購買体験でした。任天堂のような一流ブランドが離反する事態は、この問題の深刻さを物語っています。
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