それは「タバコ」にまつわる顧客対応だ。
今から11年前の2014年、マクドナルドは全3135店舗で禁煙に踏み切った。今では「ま、当然でしょ」という反応だが、当時はこの発表に対し「マック正気か?」と驚かれた。
2014年はまだ政府の受動喫煙防止法も制定されておらず、飲食店は喫煙席で愛煙家がプカプカやっているのが当たり前の光景だった。特にマクドナルドのようなファストフードは、外回りの営業マンなどがコーヒー片手に一服する「癒しのスポット」という位置付けだったのだ。
そのため、著名な経済評論家やアナリストもマクドナルドの「全店禁煙」を判断ミスだと批判。ネット上でも、「今日、近くの店に行ったらガラガラでした! 潰れるのは時間の問題かと」「喫煙者の憩いを奪うマックはもう利用しない」などと罵詈(ばり)雑言が並んだ。現場のクルーからも「客に『禁煙です』なんて言えるわけがない!」という声が上がり、マスコミも「マック完全禁煙に現場困惑『このままでは店が潰れる』」(SankeiBiz 2014年10月23日)などと報じた。
しかし、この世の終わりのように大騒ぎをしたわりにマクドナルドの全店舗禁煙はあっさりと受け入れられた。なぜうまくいったのかというと「一服できる場を提供して喫煙者を喜ばす」という目先の利益よりも、本来の「安心して食事できる場を提供して幅広い層の人々に喜んでもらう」という目的に立ち戻ったからだ。
これまで喫煙席をご利用いただいておりましたお客様には、ご不便をおかけすることとなりますが、小さなお子様からお年寄りまで、幅広い層のお客様のお食事の場として相応しい店舗環境を目指す取り組みとして、ご理解賜りますよう、何卒お願い申し上げます。(日本マクドナルド 2014年8月15日 プレスリリース)
この判断が正しかったのは、その後の同社の業績を見れば分かる。中国産チキン期限切れ問題などで一時的に落ち込むことはあっても、今日にいたるまで順調に成長しているのは、「本来の目的」を見失っていないからなのだ。
こういう過去の成功例を踏まえれば、マクドナルドがやるべき対策は子どもたちの幸せを守るため、「ハッピーセットの年齢制限」であることは明白だ。それをやらないということは、世界中のマクドナルドがこれまで続けてきた「努力」を水泡に帰することになる。
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