円安で増えた訪日客の高額消費で業績を伸ばした百貨店業界は、変化に対応し切れていない。日本百貨店協会によると全国の百貨店免税売上高は3月から4カ月連続で前年同月を下回った。6月は40.6%の大幅減、1人当たり購買単価も31.2%減の約7万8千円と消費に陰りがみえる。
免税売上高の落ち込みは業績に直結する。阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは、百貨店事業全体の3〜7月売上高が5カ月連続で前年同月を下回った。高島屋は入店客数が増えているのに減収となり、2026年2月期の連結業績予想を下方修正した。
市場の急変を受け、各社は人気キャラ活用のほか、海外富裕層に「お得意さま」になってもらう取り組みを加速させている。大丸心斎橋店(大阪市中央区)に1月、訪日客の顧客情報管理システムを導入。嗜好(しこう)に合わせた商品や催事情報を発信している。
高島屋は、シンガポール高島屋の高額利用客にVIP専用会員カードを発行し、東京や大阪に来店した際に通訳案内などを付けている。
また、国内では大企業の社員や起業で成功した経営者など、40代以下の若年富裕層による高額品の消費が活発化。各社は受け皿を準備し、将来の安定顧客になってもらう取り組みを進める。
近鉄百貨店は昨年、若年富裕層を対象にした「ラグジュアリー・アテンド課」を設置。専属スタッフが高級ブランドの買い物などをサポートするほか、ブランドフロアの貸し切りイベントも始めた。
国内消費の落ち込みなどから業績低迷に苦しんできた百貨店業界。訪日客が「救世主」となったが、追い風頼みだったことは否定できない。市場環境の変化に適応する柔軟性が求められている。
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