こうした背景を踏まえれば、今回の慎重なガイダンスは単なる弱気ではなく、業績見通しにおける誠実さの表れとみられる。ゲーム事業は四半期単位で業績変動が大きく、1Qの好調をそのまま通期に当てはめれば、市場の期待は急速に過熱する。
四半期の好調をそのまま通期に当てはめるのは、「8月が30度なら12月は60度」という冗談のようなものだ。非現実的な予測は、過熱相場を招きかねない。
DeNAはそうした轍(てつ)を踏まないよう、短期の思惑買いを抑え、中長期で企業価値を見極める株主を残す意味で期待の“振るい落とし”を行っているともいえる。これはIR戦略上、過熱相場で一気に資金が集まりやすいゲーム会社にとって極めて重要なリスク管理だ。
ゲーム企業の決算は季節要因やイベント施策に強く影響される。四半期単位で評価するのは危険だ。むしろKPI(課金ユーザー数、ARPU、継続率)や複数年単位の売上推移を追うことが、本質的な企業価値評価につながる。
足元の株価は年初からの上昇幅を3分の2ほどかき消す下落で、予想PERは約9.7倍だ。日経平均採用銘柄の平均PERが約17倍であることを考えると、東証プライム上場企業の中でも相当な割安水準まで売り込まれている。
しかし今の株価下落は、ある意味でギャンブル的な取引を好む短期筋の失望売りによる調整局面とも解釈できる。
ポケポケ1本足打法との批判もあるが、それは間違いだ。一気に広まった結果、数字上は一本足に見えるだけで、他にもポコチャやIRIAMなど業界のシェアを大きく握るアプリも存在している。こうした多角的な収益基盤は、保守的な予想が過度な悲観につながらない要因となる。
慎重な予想は、市場の短期的な過熱を避け、株主構成を安定させる効果がある。DeNAの姿勢は、中長期的な企業価値の向上につながる可能性が高い。
【お詫びと訂正:8月15日午前6時00分の初出で、DeNA社がリリースしたゲームについて事実とは異なる記載がありました。8月15日午前10時25分、該当箇所を削除いたしました。お詫びして訂正いたします。】
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