こうした調査結果を受け、博報堂メディア環境研究所 所長の山本泰士氏は、生活者とAIとの関係性を「検索AI」「相談AI」「発散AI」「愛着AI」の4つに分類した。
以下の図のX軸には「単発的(ex.いま困った・分からない・とりあえず話したい)」「継続的(ex.自分を覚えてもらう・また頼りたい・友達や恋人として)」を、Y軸には「情報志向(ex.情報検索・アイデアを出して・専門知識を教えて)」「コミュニケーション志向(ex.感情の吐露・会話を楽しむ・心を満たす)」を取っている。
これにインタビュー調査で得た回答を当てはめると、以下のようになる。
「検索・発散・相談・愛着、これら4つの関係性によって、AIは人々の生活の中に自然に溶け込もうとしている」と山本氏は分析する。
こうした役割を担う中でAIは、情報伝達の役割を担ってきた「マス/Webメディア」と、感情コミュニケーションの役割を担ってきた「ソーシャルメディア」の両方の機能を兼ね備えた、“第3のメディア”になろうとしているという。
「第3のメディアであるAIは、個人に応じて情報を生成するだけでなく、感情や意図を受け入れ、コミュニケーションまでできる。これは、もはや生活者一人一人と共創・共感する“パートナーメディア”と言っても過言ではない」(山本氏)
AIがパートナーメディアになれば「日本企業にはチャンスがある」と語る山本氏。これまで、QRコード決済や配膳ロボットにドローンなど、中国は生活領域のテクノロジーで日本に先行してきた。この事実を鑑みると、日本でも「愛着AI」の活用が普及する未来は遠くないといえるだろう。
現在、中国で月間1億人以上が使う、とあるアプリには、ユーザーが生成した数千ものAIキャラクターが存在し、友人や恋人として親しまれている。これまで日本企業は、アニメやゲームなどのコンテンツを通じて、数々のキャラクターを生み出してきた。この知見を持つ日本は、AIプラットフォーム上で、生活者に寄り添い愛されるキャラクターAIの創出元となって、課金やブランディングに活用できる可能性があると山本氏は見ているのだ。
続く後編では、「生活者にとっての重要接点がAIとなる中で、AIに自社のコンテンツやブランドをどう認識してもらい、どのように自社の存在感を高めていけばよいのか」、世界各国の専門家の意見をもとに考察した模様をお届けする。
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