主要上場ゼネコン、7割「増収」 データセンター建設など追い風も 深刻化する人手不足

» 2025年08月28日 08時00分 公開
[季原ゆうITmedia]

 主要上場建設会社の受注・業績状況が好調だ。帝国データバンクが主要上場建設会社58社を調査したところ、2024年度の売上高合計(連結ベース)は21兆3547億円。前年度比6.9%増となり、41社(構成比70.7%)が増収となった。

photo 帝国データバンクは主要上場建設会社の「2024年度の受注・業績動向」について調査を実施(画像はイメージ、出典:写真AC)

データセンター建設など追い風も、人手不足に懸念

 増収率1位は日本基礎技術で前年度比28.4%増となった。佐田建設(同23.7%増)、大成建設(同22.1%増)が続いた。減収率では大本組が15.6%減で最大だった。

photo 売上高動向(出所:プレスリリース、以下同)

 売上総利益率の平均は11.8%で、前年度から0.6ポイント改善した。37社が改善し、21社が低下した。第一建設工業が6.0ポイント増、清水建設が5.6ポイント増と大きく伸ばす一方、日本国土開発は大型造成工事で追加費用が発生し9.4ポイント減少した。帝国データバンクは「資材費や人件費の高騰が続くなか、請負金額への転嫁や採算を重視した受注姿勢が利益率改善に寄与した」と分析する。

photo 売上総利益率動向

 単体ベースで受注高が判明した46社の受注高合計は15兆8003億円で、前年度比4.4%増となった。30社が増加し、16社が減少した。都市部の再開発やデータセンター建設、半導体関連工場などが需要を押し上げたとみられている。

 受注増加率トップは植木組(前年度比66.7%増)で、東急建設(同36.9%増)、錢高組(同34.7%増)が続いた。一方、清水建設は同24.2%減と最大の落ち込みとなった。

photo 受注動向

 官公庁工事の受注高は2兆8746億7600万円で、前年度から1.0%増となった。増加企業数と減少企業数はほぼ拮抗した。伸び率トップはイチケン(前年度比315.4%増)だった。民間工事の受注高は8兆7807億200万円で8.3%増となり、18社が増加した。植木組(同71.7%増)、大豊建設(同60.8%増)、東洋建設(同50.5%増)が上位となった。

photo 受注動向〈官・民内訳〉

 官公庁では防災・減災や国土強靭化関連の発注拡大が見込まれ、民間ではデジタル化を背景としたデータセンター建設や都市部の再開発、鉄道工事、再生可能エネルギーや脱炭素関連分野への投資が続く見通しだ。これにより、建設需要は当面堅調に推移すると予想される。

 一方、施工管理技士や現場作業員の不足が深刻化。案件があっても施工が進まないケースが発生しているため、工期の長期化や建設コストの上昇が懸念されるという。

 2025年5月にはインフロニア・ホールディングスが三井住友建設へのTOBを発表。続く8月には大成建設が東洋建設に対するTOBを公表するなど、大手による再編も本格化している。帝国データバンクは「受注環境自体は堅調としつつも、人口減少に伴う人手不足は長期的に深刻化するとみられ、経営基盤の強化が求められる」と分析している。

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