最大の問題点は、経営の監視役たる監査法人が「問題なし」のお墨付きを与えてしまったことではないでしょうか。
実は同社の監査法人は2022年9月に変更となっています。その理由は2021年12月期の監査を完了できず、2022年12月期の監査契約を見送ったことです。しかも、2021年12月期の監査が完了できなかった理由は「販売代理店と広告代理店が同一の企業グループであって循環取引のおそれがあり、現在の状況では循環取引ではないと心証を得るための十分な監査手続きが実施できない」というものでした。
まさに同社粉飾の核心を突いた指摘です。しかし、後任のシドー監査法人は、前任監査法人から循環取引疑念の引き継ぎを受けていながら、経営陣による偽造広告発注書などを使った虚偽説明を信用し、AI GIJIROKUの契約アカウントの実在性などを確認することなく「問題なし」との判断を下してしまいました。
監査の専門家である監査法人のお墨付きが得られてしまったことで、社外取締役、監査役、ベンチャーキャピタルらは、循環取引疑惑を払拭(ふっしょく)してしまう流れになっていったのです。この点が、不正企業を上場に導いてしまった重要ポイントであることは間違いありません。
監査法人に関して申し上げれば、当初の監査法人は大手(具体的名称は非公表)であったものの、後を受けたシドー監査法人は常勤職員が9人という小所帯であり、日進月歩で革新を続けるAI業界の企業の監査を担当するには力量不足だったのではないかと、感じさせられます。
各種製造業や流通業などの伝統的な業界ならばともかく、物質的に実態のあるモノを扱っているわけでなく、日々技術的な進化を遂げているような業界に関しては、社外取締役や監査役と監査法人が連携をとりつつお互いの疑問をぶつけあいながら、しっかりと経営監視の責任を果たしていく必要があると強く感じさせられます。
オルツの粉飾決算 見抜けなかった東証・証券会社の「重い責任」
AIに恋し、悩みも相談――インタビューで明らかになった、“想像を超える”生活者の生成AI活用術Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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